介護者が一時的に介護から離れ、休息を取れるように支援するための措置を「レスパトケア」といいます。

自宅での介護は、24時間年中無休で継続していかなければなりません。長期間にわたる介護は、身体的・精神的疲労や介護からくる不安・ストレスを介護者に与えます。心身の健康が損なわれてしまえば、介護者自身も第三者の支援が必要となって可能性があります。こうした、要介護者・介護者共にサポートが必要となってしまう、いわゆる〝共倒れ〟を防ぐためにも、介護者には定期的な休息が必要と言われています。 今回は、「レスパイトケア」として利用できる介護サービスや、利用方法などについてご紹介させていただきます。

目次

レスパイトケアとは

「レスパイト(Respite)」とは、「一時休止」「息抜き」「休息」を意味する言葉です。介護における「レスパイトケア」とは、在宅ケアを担う介護者の負担軽減を図るため、要介護者の在宅介護を一時的にお休みし、介護者が休息をとれるように支援するためのサービスをいいます。

要介護者を親戚や友人などが一時的に預かる支援もレスパイトケアにあたりますが、介護保険制度から考えるならば、一般的には、「デイサービス」や「ショートステイ」といった通所サービスの利用が、介護者を支援する措置を指しています。

現在の日本は超高齢社会であり、少子化、そして核家族化が進んでいます。夫婦ともに高齢者同士で介護を行う「老老介護」だけではなく、介護と仕事の両立が難しく、子どもが両親の介護を理由に退職をする「介護離職」が社会問題となっています。

厚生労働省の「平成28 年 国民生活基礎調査の概況 介護の状況」では、在宅介護を行っている介護者のうち、介護の悩みやストレスの有無について、「ある」と答えた方は男性6割以上、女性7割以上という結果が出ています。介護の悩みやストレスの原因としては、「家族の病気や介護」と答えた方が圧倒的に多く、他にも、「自分の病気や介護」、「収入・家系・借金等」、「自由にできる時間がない」といった理由も挙げられています。

トイレ介助や入浴介助、着替え、移乗介助などは、体力の消耗はもちろん、介護者の身体に大きな負担がかかるため、腰痛など、介護者が身体を壊すリスクも高い傾向にあります。中には、介護だけではなく、仕事や子育てなどを同時に行っている方もいるでしょう。

「介護」は、ストレスや不安など精神的な負担も大きく、厚生労働省「家族介護者支援マニュアル 平成30年3月」では、「身体的負担」「経済的負担」以上に「精神的負担」を感じている介護者が多いという結果も出ています。

「介護」において、要介護者のQOL(生活の質)の向上を目指すのは重要です。ただし、要介護者だけではなく、介護者側のQOL(生活の質)も尊重されなければなりません。

そのため、要介護者が介護保険サービスを受ける際の介護サービス計画書には、介護者のためのレスパイトケアを計画的に取り入れる必要がある場合もあります。

在宅介護に勧めるレスパイトケア

レスパイトケアとして利用できる、介護保険適用のサービスには、以下のようなものがあります。

短期入所生活介護(ショートステイ)

特別養護老人ホーム等に短期間(数日~数週間)入所し、食事、入浴、排泄の介護、その他必要な日常生活上の支援、機能訓練などが受けられるサービスです。利用する際は、基本的に施設へ事前予約する必要がありますが、介護者の体調不良や冠婚葬祭など、緊急で利用したい場合にも、空きがあれば利用することが可能です。(緊急の場合は加算)

利用期間は、原則、1ヶ月に連続30日ですが、自費利用を含めれば、それ以上利用可能です。ただし、要介護度が低いと、支給限度基準額を超えての利用になるので自己負担は多くなります。

対象者 要介護1~5の認定を受けた方
(要支援1、2の認定を受けた方は、「介護予防短期入所生活介護」を利用)

短期入所療養介護(医療型ショートステイ)

介護老人保健施設や介護療養型医療施設等に短期間入所し、看護や医学的管理の下、介護、機能訓練、その他必要な医療、日常生活上の世話を受けられるサービスです。症状は安定しているものの、たん吸引やインスリン注射、点滴、認知症といった、医学的管理や処置等が必要な要介護者の在宅介護の場面において、利用者の療養生活の質の向上や介護者の負担軽減を図ります。医療専門の職員が手厚く配置されているなど、医療的ケアの側面が強いという特徴があります。空きがあれば、緊急時の利用も可能です。(緊急の場合は加算)

対象者 要介護1~5の認定を受けた方
(要支援1、2の認定を受けた方は、「介護予防短期入所療養介護」を利用)

通所介護(デイサービス)

自宅から事業所に送迎で通いながら、食事、入浴、その他日常生活上の支援や、機能訓練、リハビリテーション等を受けられる、日帰りのサービスです。引きこもりになりがちな高齢者の外出促進や、生活リズムの乱れ防止、家族の介護負担軽減等を図ることができます。

要介護1~5の認定を受けた方が対象となっていますが、外出が可能で、比較的軽度の要介護者の利用に適しているサービスといえます。

対象者

要介護1~5の認定を受けた方
(要支援1、2の認定を受けた方は、「介護予防通所介護」を利用)

通所リハビリテーション(デイケア)

自宅から、病院、診療所、老人保健施設等に通い、医師の管理の下、理学療法士や作業療法士等による、専門的な医療的ケアとリハビリテーションが受けられるサービスです。身体機能や生活機能の維持・向上を目的としており、本人の状態に合わせた個別の機能訓練や集団訓練が実施されます。「通所介護(デイサービス)」よりも目的が明確で(リハビリが中心)、専門的な指導と医療処置を受けることができますが、単価は高く設定されており、原則、送迎は本人または家族が行うことになります。 事業所によっては、食事・入浴の介助を受けられるところもあります。

対象者 要介護1~5の認定を受けた方
(要支援1、2の認定を受けた方は、「介護予防通所リハビリテーション」を利用)

認知症対応型通所介護

認知症の方を対象に、認知症専門のケアを提供するサービスです。本人は、特別養護老人ホームや老人デイサービスセンター等に通い、日帰りで、食事、入浴、排泄の介護や、その他日常生活上の支援、機能訓練、リハビリテーション等を受けることができます。事業所の職員による送迎も行っています。

対象者 認知症の症状がある、要介護1~5の認定を受けた方
(認知症の症状がある、要支援1、2の認定を受けた方は、「介護予防認知症対応型通所介護」を利用)

地域密着型通所介護(小規模デイサービス)

自宅から、利用定員18人以下の小規模な老人デイサービスセンターなどに通い、食事や入浴、排泄の介護、その他必要な日常生活上の支援、生活機能訓練等を引き受けることができる、日帰りのサービスです。

対象者 要介護1~5の認定を受けた方

訪問介護(ホームヘルプサービス)

資格を持つ訪問介護員(ホームヘルパー)が、利用者の自宅を訪問し、身体介護(食事介助、入浴介助、清拭、排泄介助、歩行介助、更衣介助、移乗介助等)や生活援助(食事の準備、掃除、洗濯等)、通院等乗降介助といったサービスを行います。

対象者 要介護1~5の認定を受けた方
(要支援1、2の認定を受けた方は、「介護予防訪問介護」を利用)

訪問看護

看護師が要介護者の自宅に訪問し、本人の状態に応じた医療ケアを行います。具体的には、主治医の指示の下、病状の観察や療養上の世話、治療の補助、歩行や嚥下などのリハビリテーション、終末期を自宅で過ごすターミナルケア等の支援を行います。病状観察は定期的に行ってくれるため、速やかに症状に対応することもできますし、24時間体制のところでは、夜間や休日の訪問看護の実施も可能です。

対象者 要介護1~5の認定を受けた方
(要支援1、2の認定を受けた方は、「介護予防訪問看護」を利用)

訪問入浴介護

自宅での入浴が困難な場合に、浴槽を積んだ入浴車が利用者の自宅を訪問し、看護職員や介護職員による入浴介護を行うービスです。全身浴、部分浴、清拭の他、主治医の指示などを確認し、体温、血圧、脈拍等の測定、着替えの介助等も行います。

対象者 要介護1~5の認定を受けた方
(要支援1、2の認定を受けた方は、「介護予防訪問入浴介護」を利用)

要介護者が特定の施設で短期間宿泊するサービスや、日中だけ施設で過ごす日帰りのサービスが、レスパイトケアとして利用できる代表的なサービスになります。上記でご紹介したこれらのサービス利用が、介護者の負担軽減を図ると同時に、要介護者の心身機能の状態の維持や症状の悪化を防ぎ、要介護者にとっても良い変化をもたらすきっかけに繋がるでしょう。

レスパイトケアを利用したい場合

在宅介護を行っている家族がレスパイトケアを利用するには、いくつかの手続きが必要です。まずは、各市町村の以下の窓口などに相談するようにしましょう。

  • 高齢者福祉窓口(市町村役所・役場)
  • 地域包括支援センター
  • 居宅介護支援事業

また、介護保険適用のサービスを利用するためには、利用者本人の要介護認定が必要となります。要介護認定の申請は、各市町村の専用の窓口で受け付けていますが、直接行くのが難しいという方は、居宅介護支援事業者等に申請の代行を依頼することもできます。

要介護度が確定次第、担当のケアマネジャーと利用したい介護サービス等について話し合い、介護サービスの計画書(ケアプラン)を作成していきます。ケアプランの内容が決まると、サービス事業者と契約し、サービスの利用が開始されます。

介護うつにならない為にも

ある日突然、元気だった自分の家族が、要介護状態になるのはショックなことです。

介護中は、身体的負担だけではなく、本人と意思疎通ができない苛立ちや、常に見守っていなければならないという緊張感、今の生活がいつまで続くのかという不安、周囲が手を貸してくれないストレスなど、多くの精神的負担も伸し掛かることになります。そのため、要介護者に思わず感情をぶつけてしまうような場面もあるかもしれません。

近年は、介護者が精神的に追い詰められてしまい、うつ病を発症してしまう、いわゆる「介護うつ」になるケースが増えてきていることも問題となっています。「介護うつ」は病名ではありませんが、介護を原因とするうつ病を指していう言葉で、介護者である本人も、周囲の方も気付きにくく、知らないうちに進行している場合もあります。

うつ病は、一度発症すると、治るまでに時間が掛かりますし、回復しても再発しやすい傾向にあります。

介護者は、要介護者と良い関係で在宅介護を続けていくためにも、デイサービスやショートステイなどをうまく組み込み、できるだけ心にゆとりのある生活を送れるように心がけるようにしましょう。

まとめ

今回は、「レスパイトケア」についてお話させていただきましたが、いかがでしたか。

身体的にも精神的にも大きな負担がかかる在宅介護は、さまざまな介護保険サービスを利用しながら、上手に息抜きしていくことが大切です。

「レスパイトケア」は、要介護者・介護者ともに生活の質(QOL)の向上を目指すのに重要なサービスです。介護者の心身の健康を保つためにも、サービスを適度に活用していくようにしましょう。

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