「認知症対応型通所介護(認知症デイサービス)」は、食事や入浴等の介護、機能訓練など、認知症の症状に配慮した専門的サービスを提供し、通常のデイサービスと同様に、送迎も行われている為、家族の負担軽減の役割を果たしています。
この「認知症デイサービス」は、身近な環境下でサービスを利用することができる「地域密着型サービス」に含まれており、初めての方でも馴染みやすいという良さがあります。
今回は、「認知症対応型通所介護(認知症デイサービス)」のサービス内容や、特徴、費用などについてご紹介したいと思います。

目次

認知症対応型通所介護(認知症デイサービス)とは

認知症対応型通所介護(認知症デイサービス)は、認知症の居宅要介護者が、自宅から、老人デイサービスセンターや特別養護老人ホーム等に通い、以下のようなサービスを受けることができるものをいいます。

・食事、入浴、排泄等の介護、その他必要な日常生活上の支援
・介護や生活等に関する相談
・健康管理
・機能訓練、リハビリテーション
・レクリエーション
・車での送迎 ほか

提供されるサービスの内容は、一般のデイサービス(通所介護)と同様ですが、認知症の方を専門としたデイサービスであることから、認知症や認知症ケアの知識、経験等が豊富な専門のスタッフが配置されており、認知症の方に適したケアが提供されます。さらに、事業所の職員が、利用者の自宅から施設まで車で送迎してくれるため、ご家族の方は、その都度、車で送迎する必要がなく、利用者も家族に気を遣わずに安心して通うことができます。
ただし、医療的処置に関しては、対応の有無や利用できる項目などが各事業所によって異なるため、詳しく知りたい方は、事業所に直接問い合わせする必要があります。

認知症対応型通所介護(認知症デイサービス)は、利用者定員が12名以下の小規模施設で提供されるため、施設のスタッフや利用者と顔なじみになりやすく、一般の通所介護よりも手厚い介護を受けることができます。利用者数が少ないほど、こまやかな対応が可能です。

認知症対応型通所介護(認知症デイサービス)の主な目的は、以下の通りになります。

・住み慣れた地域・居宅で、可能な限り自立した生活の継続
・心身機能の維持・改善
・利用者の社会的孤立感の解消
・BPSD(行動・心理症状)の緩和
・利用者家族の介護負担の軽減

また、認知症対応型通所介護(認知症デイサービス)には、以下の3つの類型があります。

【単独型】
新たに施設を設けて、単独で運営。
※養護老人ホーム、特別養護老人ホームなどに併設されていない事業所。

【併設型】
養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、老人福祉センターなどに併設。

【共用型】
「認知症対応型共同生活介護」、「地域密着型特定施設」、「地域密着型介護老人福祉施設」などの事業所の空きスペース(食堂など)を活用。
※ただし、共用型の場合、1日の同時間帯の定員は3名となる。

認知症対応型通所介護(認知症デイサービス)は、地域密着型サービスの一つであり、利用者が、住み慣れた地域での暮らしから切り離されることなく、家庭的な雰囲気の中で介護サービスを受けることができるのが特徴です。
認知症の方は、環境の変化にとても敏感です。新しい環境や馴染みのない職員・利用者に囲まれて生活することは、混乱を招き、不安を覚え、認知症を悪化させる原因となります。特に施設の規模が大きくなると、その分施設を出入りする人も多くなるため、不安な気持ちはより一層強くなります。
このように、認知症介護では、周囲の環境や人とのかかわりがとても重要となってきますが、認知症対応型通所介護(認知症デイサービス)は、住み慣れた地域で、馴染みのある人から介護を受けられため、認知症の方にとって安心できる環境と言えます。
生活面の支援が受けられるだけでなく、事業所に通うことで家から外出する機会が増えるため、利用者の生活リズムを整えることもできます。

認知症の症状が軽度である者に対し、要介護状態になるのを防ぐことを目的に提供される「介護予防認知症対応型通所介護」もあります。提供されるサービスの内容や事業所の基準等については、「認知症対応型通所介護」と同等になります。

認知症対応型通所介護(認知症デイサービス)の対象者・利用方法

対象者

利用できるのは、以下の条件に当てはまる方が対象となります。

【認知症対応型通所介護(認知症デイサービス)】
・要介護1以上の認定を受けている
・事業所がある地域に住民票がある
・医師により認知症の診断を受けている

【介護予防認知症対応型通所介護】
・要支援1または要支援2の認定を受けている
・事業所がある地域に住民票がある方
・医師により認知症の診断を受けている

対象者が「要介護者」または「要支援者」であるかの違いにより、利用サービスは「認知症対応型通所介護(認知症デイサービス)」と「介護予防認知症対応型通所介護」に分けられます。ただし、どちらも、認知症の原因となっている疾患が急性である場合には、サービスの対象外となります。
認知症は病名ではなく、アルツハイマー病や脳血管疾患等の後天的な脳の障害により、記憶力や認知機能が低下し、日常生活や社会生活に支障をきたしている状態のことをいいます。「認知症対応型通所介護(認知症デイサービス)」と「介護予防認知症対応型通所介護」の対象者は、医師の診断によって認知症の症状があると判断された場合に限ります。
また、地域密着型サービスであるため、事業所が所在している地域と同じ地域に住民票がある方でなければ、サービスを利用することはできません。

利用方法

「認知症対応型通所介護(認知症デイサービス)」に限らず、介護保険サービスを利用するためには、まず要介護認定を受ける必要があります。要介護認定の申請は、各市町村の専用の窓口で受け付けています。

以下は、要介護認定による要介護度の確定後の利用手順です。

1)「要介護」の認定を受けた方は、居宅介護支援事業者のケアマネジャーに、「要支援」の認定を受けた方は、地域包括支援センターに、「認知症対応型通所介護(認知症デイサービス)」の利用に関しての相談をする。

2)ケアマネジャーからサービス提供事業者の候補をいくつか提案してもらい、見学や体験が可能であれば、利用してみる。

3)希望する施設が決まり次第、利用申し込みを行う。

4)サービス提供事業者(施設)のケアマネジャーがケアプランを作成。

5)サービス提供事業者(施設)と契約し、サービス利用を開始する。

認知症対応型通所介護(認知症デイサービス)の費用

 ■認知症対応型通所介護(1日あたりの基本料金:自己負担額1割の場合)

単独型
3時間以上4時間未満 要介護1 540円
要介護2 594円
要介護3 650円
要介護4 705円
要介護5 759円
4時間以上5時間未満 要介護1 566円
要介護2 623円
要介護3 681円
要介護4 738円
要介護5 795円
5時間以上6時間未満 要介護1 853円
要介護2 945円
要介護3 1,035円
要介護4 1,127円
要介護5 1,219円
6時間以上7時間未満 要介護1 875円
要介護2 969円
要介護3 1,061円
要介護4 1,156円
要介護5 1,250円
7時間以上8時間未満 要介護1 989円
要介護2 1,097円
要介護3 1,204円
要介護4 1,312円
要介護5 1,420円
8時間以上9時間未満 要介護1 1,021円
要介護2 1,132円
要介護3 1,242円
要介護4 1,355円
要介護5 1,465円
併設型
3時間以上4時間未満 要介護1 489円
要介護2 538円
要介護3 586円
要介護4 636円
要介護5 685円
4時間以上5時間未満 要介護1 512円
要介護2 563円
要介護3 615円
要介護4 666円
要介護5 717円
5時間以上6時間未満 要介護1 767円
要介護2 849円
要介護3 931円
要介護4 1,011円
要介護5 1,094円
6時間以上7時間未満 要介護1 786円
要介護2 871円
要介護3 955円
要介護4 1,037円
要介護5 1,122円
7時間以上8時間未満 要介護1 889円
要介護2 984円
要介護3 1,081円
要介護4 1,177円
要介護5 1,272円
8時間以上9時間未満 要介護1 917円
要介護2 1,015円
要介護3 1,115円
要介護4 1,215円
要介護5 1,314円
共用型
3時間以上4時間未満 要介護1 265円
要介護2 275円
要介護3 284円
要介護4 293円
要介護5 303円
4時間以上5時間未満 要介護1 277円
要介護2 288円
要介護3 297円
要介護4 307円
要介護5 317円
5時間以上6時間未満 要介護1 443円
要介護2 458円
要介護3 475円
要介護4 491円
要介護5 507円
6時間以上7時間未満 要介護1 455円
要介護2 470円
要介護3 487円
要介護4 503円
要介護5 519円
7時間以上8時間未満 要介護1 520円
要介護2 539円
要介護3 557円
要介護4 575円
要介護5 595円
8時間以上9時間未満 要介護1 537円
要介護2 556円
要介護3 575円
要介護4 594円
要介護5 615円

≪参考≫介護給付費単位数等サービスコード表(令和元年10月施行版)よリ

上記の表はサービスを利用した際の基本料金であり、食費やおやつ代、おむつ代などの生活用品は、別途必要となります。
基本料金の自己負担額は、かかった費用の原則1割ですが、利用者の所得に応じて、2~3割負担となる場合もあります。
また、サービスの利用回数が多いほど費用は高くなるため、利用頻度によっては、家族の介護の負担は軽減できても、費用面で負担がかかってしまう可能性があります。

具体的な金額設定については、サービス提供事業者によって異なるため、詳しく知りたい方は、入所を検討している施設に問い合わせをするようにしましょう。

一般的な通所介護(デイサービス)との違い

一般的な通所介護は、自宅で生活している、外出可能な要介護1~5の方が対象となっていますが、最初の項目でもお伝えしたとおり、「認知症対応型通所介護(認知症デイサービス)」では、居宅要介護者のうち、医師の診断により認知症の診断を受けた方のみが対象となっています。
また、一般的な通所介護(デイサービス)は、利用者数に応じて、利用者定員19名以上の通常規模型・大規模型と、利用者定員18名以下の地域密着型事業所(小規模デイサービス)に分かれています。特に、通常規模型・大規模型の通所介護では、施設の利用者数が多い分、細やかな対応が難しく、人の入れ替わりも激しいため、認知症の方が生活する環境としては、あまり向いていないと言えるでしょう。
しかし、「認知症対応型通所介護(認知症デイサービス)」では、個別対応を前提としている手厚い人員配置で、一人一人の状況や要望等に対応できるようになっています。さらに、専門のスタッフによる、認知機能の維持や改善を目的とした機能訓練も行われます。認知症の症状悪化の原因となる、ストレスや不安の軽減を図るため、環境やサービス内容にも配慮されています。

認知症の方がデイサービスを拒否した場合

以下のような理由で、認知症の方が、デイサービスの利用や外出を拒否する場合もあります。

・自宅にデイサービスの送迎車が来るのが恥ずかしい
・外出する準備で周囲がばたばたしていることで不安な気持ちになり、結果的に外出拒否に繋がる。
・出かける意欲がない
・どこに行くのかが分からない
・苦手な職員や、気が合わない利用者がいる

普段から利用している施設でも、記憶力や認知機能の低下により、今からどこに向かうのか、何をしに行くのかが理解できなかったり、認知症の方によくみられる「意欲の低下(アパシー)」により、外出する気力がなかったりすると、施設に行くのが難しい状況になることもあります。また、認知症の方は環境に敏感であるため、周囲にいる人が外出の準備などでばたばたしていると、不安な気持ちを抱きやすくなり、外出を拒否してしまうこともあります。
このような場合の対策として、まず、顔なじみの職員や仲の良い利用者の写真を見せながら外出を促してみたり、本人が外出をイメージしやすい用語(リンゴ狩りや孫の運動会など、行事など)を使って声をかけてみたりすると良いでしょう。今から何をしに行くのか、本人が想像しやすくなり、外出に納得してくれることがあります。
朝の服薬管理等は、可能であれば施設で対応してもらうなど、仕事で忙しい家族が、施設に行く準備の手間が少しでも省けるよう、施設に相談し協力してもらうことも一つの方法です。

また、職員による送迎や、職員や利用者と顔なじみになりやすいといったメリットが、逆にデイサービスの利用拒否の原因となっていることもあります。
送迎は強制ではないため、本人が自宅にデイサービスの送迎車が来ることを嫌がっているなどの理由がある場合、利用者家族が送迎をすることも可能です。
本人が苦手に思っている職員や利用者がいて、拒否が長く続く場合には、事業所を変えるという選択肢もあります。
外出拒否に限らず、サービスを利用するうえで、拒否などの何か困ったことがあれば、家族だけで解決しようとはせず、まずはケアマネジャーに相談するようにしましょう。送迎や入浴介助の職員を変更してもらうなど、さまざまな対策を考えてくれます。

まとめ

今回は、「認知症対応型通所介護(認知症デイサービス)」についてお話させていただきましたが、いかがでしたか。

「認知症対応型通所介護(認知症デイサービス)」は、認知症の方を専門としているため、利用者ができる限り自宅での生活を続けられるよう、個々に適したさまざまなケアを行ってくれます。
デイサービスによって、自宅に引きこもりがちな認知症の方の外出を促すことに繋がれば、家族の負担の軽減にも繋がります。特に、仕事と介護の両立が難しいという場合には、早いうちから利用を検討してみても良いかもしれません。

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