「ショートステイ(短期入所生活介護)」とは、在宅介護の方が、特養等に一時的に短期入所し、施設入所者と同様に、その施設において介護等を受けるサービスをいいます。毎日介護を行っている家族が、入院・外出等で一時的に介護ができない状況時や、介護者の介護負担軽減などを目的に利用されています。

今回は、「ショートステイ(短期入所生活介護)」の具体的なサービス内容や、費用などについてご説明させていただきます。

目次

ショートステイ(短期入所生活介護)とは

「ショートステイ(短期入所生活介護)」とは、自宅で介護を受けている居宅要介護者が、介護老人福祉施設等に短期間(数日~数週間程度)入所し、その施設において、以下のサービスを受けられるものをいいます。

  • 日常生活上の世話、介護
  • 食事の提供
  • 入浴、清拭(週2回以上)
  • 健康管理(健康状態の管理、緊急時の対応、療養上の世話)
  • 機能回復訓練(必要に応じて)
  • レクリエーション(必要に応じて)
  • 送迎
  • 利用者や家族からの生活や介護等に関する相談の対応、助言

これらのサービスは、利用者の社会的孤立感の解消や、心身機能の維持を図ること等を目的としています。

「ショートステイ(短期入所生活介護)」は、多くの場合、介護者の負担軽減(レスパイトケア)目的で利用されますが、その他にも、介護者の入院や怪我、冠婚葬祭等の緊急時に臨時でサービスを利用する方もいます。

主な利用目的

  • 介護者の身体的・精神的負担の軽減
  • 介護疲れによる疲労の回復
  • 家族の外出(旅行、出張等)
  • 介護者の仕事と介護の両立
  • 施設等に入所するまでの待機期間での利用
  • 申し込んでいる施設の生活に慣れるための利用
  • 夜間の見守り
  • 介護者の体調不良(病気、怪我等)や冠婚葬祭など、突発的な事態に際しての、緊急・臨時的な利用
  • 入院や入所は必要ないレベルだが、独力では在宅生活が不安な方の生活状況の安定

利用する際は、原則として、「ショートステイ(短期入所生活介護)」を提供する施設に、事前に連絡して予約をしておく必要があります。

利用できる期間

「ショートステイ(短期入所生活介護)」が利用できる日数は、原則、1ヶ月に連続30日までとなっており、料金は、かかった費用の1割負担(所得に応じて2~3割)になります。また、自費利用も間に挟めば、連続30日を超えて利用可能です。ただし、支給限度基準額が要介護度によって決められているため、超過した分は自己負担となります。要介護度が低めの方の長期利用は、持ち出しが増えるので注意が必要です。

施設に入居するまでの待機期間中という場合、利用者や家族(介護者)の状況等によっては、連続でショートステイを利用する必要があります。このようなケースは、ケアマネジャーが、一日だけ全額自己負担の日を入れるか、一部分を別の月にまたぐようにするなどして、介護サービス計画書(ケアプラン)を作成したりします。

ショートステイが受けられる施設

「ショートステイ(短期入所生活介護)」を提供する施設は、以下の通りです。

  • 特別養護老人ホーム
  • 養護老人ホーム
  • 老人短期入所施設
  • 特定施設入居者生活介護(介護予防を含む)の指定施設
  • 指定地域密着型特定施設入居者生活介護の指定施設
  • 介護老人保健施設
  • 病院、診療所

施設の類型

「ショートステイ(短期入所生活介護)」には、ショートステイ(短期入所生活介護)を単独で運営している「単独型」、特養等の本体施設に併設されている「併設型」があります。

また、居室のタイプは、「従来型個室」、「多床室」、「ユニット型個室」、「ユニット型個室的多床室」の4つのタイプに分かれています。

従来型個室 1居室1名の個室。食堂、トイレ、浴室などは共用。
多床室 1居室複数人(4名程度)の相部屋。食堂、トイレ、浴室などは共用。
ユニット型個室 入居者10人以下の少人数グループを1ユニットとし、ユニットごとに生活。共同生活室(リビングスペース)を中央に置き、それを囲むように個室が設置されている。
ユニット型個室的多床室 「ユニット型個室」と同様のサービス・設備だが、居室は大部屋をパーテーション等で区切ったもので、完全個室ではない。

職員体制

管理者 専従1人(併設型では兼務可)
医師 1人以上
生活相談員 利用者100人につき1人以上(常勤換算)※うち1人は常勤(利用定員が20人未満の併設事業所を除く)
介護・看護職員 利用者3人につき1人以上(常勤換算)※うち1人は常勤(利用定員が20人未満の併設事業所を除く)
栄養士 1人以上※利用定員が40人以下の事業所の場合、他施設の栄養士と連携があれば配置されなくてもよい
機能訓練指導員 1人以上(併設施設との兼務可)
調理員、その他 実情に応じた適当数

≪参考≫厚生労働省 第180回(R2.7.20) 社保審-介護給付費分科会「短期入所生活介護」

医師は1人以上の配置が義務付けられているため、利用者の突然の体調不良にも対応可能となっています。

要支援者の場合

要介護認定により、「要支援1」または「要支援2」の認定を受けた方は、「介護予防短期入所生活介護」を利用することができます。「介護予防短期入所生活介護」は、「短期入所生活介護」とほぼ同等のサービスですが、入所日数は要介護者よりやや短くなり、要支援者が要介護状態になったり、症状がそれ以上悪化したりしないように防ぐことを目的としたサービスとなっています。

ショートステイ(短期入所生活介護)の対象者・利用方法

対象者

要介護1~5の認定を受けた方

利用方法

「ショートステイ(短期入所生活介護)」の利用を希望する場合、あるいは急に必要になった場合、まずは担当のケアマネジャーに相談するようにしましょう。相談する際は、利用する目的や利用したい期間等も伝えます。

ケアマネジャーは、居室の空き状況等を確認し、ショートステイ(短期入所生活介護)を提供する事業者に申し込みをしてくれます。施設によっては、利用申し込み前の見学も可能です。

利用する事業者が決まると、ケアプランを作成します。ケアプランの内容が決まり次第、事業者と契約してサービスの利用が開始されます。

ショートステイ(短期入所生活介護)の費用

「ショートステイ(短期入所生活介護)」は、単独で運営している「単独型」か、特養等に併設されている「併設型」、また、要介護度、利用する居室のタイプによって費用が変わってきます。

1日あたりの利用料(1割負担の場合)

単独型
  要介護1 要介護2 要介護3 要介護4 要介護5
従来型個室 627円 695円 765円 833円 900円
多床室 627円 695円 765円 833円 900円
ユニット型個室 725円 792円 866円 933円 1,000円
ユニット型個室的多床室 725円 792円 866円 933円 1,000円
併設型
  要介護1 要介護2 要介護3 要介護4 要介護5
従来型個室 586円 654円 724円 792円 859円
多床室 586円 654円 724円 792円 859円
ユニット型個室 684円 751円 824円 892円 959円
ユニット型個室的多床室 684円 751円 824円 892円 959円

≪参考≫ワムネット 介護給付費単位数等サービスコード表(令和元年10月施行版)

上記の表は、1日あたりの基本料金(1割負担の場合)となります。この他に、ケアプランに含まれていない、緊急用の「ショートステイ(短期入所生活介護)」を利用した際に加算される「緊急短期入所受入加算」や、送迎を行う場合の「短期入所生活介護送迎加算」等が付くため、サービスの利用状況によっては、料金が大幅に高くなることもあります。 また、食事代やおむつ代、宿泊費、娯楽費等は自己負担となります。

ショートステイ(短期入所生活介護)のメリット・デメリット

メリット

  • 介護をしている家族が、急な体調不良等で一定期間家にいることができず、要介護者の自宅での生活が一時的に困難になった場合に、短期間施設に入所して、介護の専門家による介護サービスを利用することができる。
  • 利用者の心身機能の維持や向上が図れる。
  • 複数の人とコミュニケーションをとることができる。
  • 医師の配置が定められているため、利用者の急な体調不良等の対応が可能。
  • 介護者の負担軽減(レスパイト※)に繋がる。

※レスパイトとは、〝休息〟、〝息抜き〟を意味する言葉で、在宅介護を担う介護者の休息や、負担を一時的に軽減するためのサービスは「レスパイトケア」と呼ばれています。

「ショートステイ(短期入所生活介護)」は、介護者の負担軽減目的での利用が多くみられますが、利用者にとってもメリットはあります。

施設入居者と同様、日常生活に必要な介護や支援が受けられるのはもちろん、リハビリ、レクリエーションの実施や、栄養バランスの良い食事の提供等もあるため、利用者の心身機能の維持や向上を図ることができます。

また、医師は1人以上配置されることになっており、利用者の突然の変化にも対応可能なことから、家族は安心して短期入所させることができます。

デメリット

  • 「ショートステイ(短期入所生活介護)」の需要が多いため、予約を取ることが難しく、2、3ヶ月先まで予約が取れないケースも多い。
  • 利用者が感染症にかかってしまったり、施設では対応できない医療措置が必要になったりした時などは、予約しても利用できない場合がある。
  • 利用者が認知症の場合は、認知症を悪化させてしまう可能性がある。
  • 対人関係が苦手な利用者の場合、見知らぬ人と過ごすことがストレスに感じる場合がある。

利用者が人見知りであったり、本人が施設での生活が苦手だったりする場合、長期にわたり自宅を離れて生活することが、負担に感じる場合もあります。

特に認知症の介護は負担がかかりやすいため、ショートステイの利用を希望したいと考えている方も多いかもしれませんが、環境の変化や見知らぬ人との生活が、認知症の悪化に繋がる可能性もあります。

また、認知症に関する専門的な知識をもつスタッフがいない場合、利用者が十分なサービスを受けることが難しくなります。

ショートステイとミドルステイの違い

「ショートステイ(短期入所生活介護)」より長い期間(数ヶ月程度)連続して施設に入居し介護が受けられるサービスを、一般的に「ミドルステイ」と呼びます。

ミドルステイは、介護保険サービスとして存在するものではなく、また、ショートステイと区別するための明確な違いやルールがあるわけではありません。しかし、施設が、「ミドルステイ」という名で、1週間~数年単位の入居が可能なプランを用意していたり、自治体が事業としてミドルステイを実施していたりすることがあります。「ショートステイ(短期入所生活介護)」とは異なり、月単位での短期契約が可能です。対象者や利用料等の具体的な内容は、ミドルステイを提供する施設によって異なります。1ヶ月以上滞在するということであれば、介護サービス部分が介護保険適用になる場合もあります。 ショートステイとミドルステイは、家族や利用者の状況に合わせて選ぶと良いでしょう。

まとめ

今回は、「ショートステイ(短期入所生活介護)」についてお話させていただきましたが、いかがでしたか。

「ショートステイ(短期入所生活介護)」は、在宅で介護をしている家族の疲れを回復させるための、「レスパイトケア」の一つです。もちろん、急な外出や体調不良等による緊急時など、さまざまな理由で利用する方も多くいます。

複数人でコミュニケーションをとれる機会のある「ショートステイ(短期入所生活介護)」は、自宅で生活する利用者にとって良い刺激となることもあります。

入居するまで待機期間、施設の生活に慣れるという意味でも、本人がストレスに感じていないようであれば、これらのサービスを積極的に利用してみてはいかがでしょうか。

ただし、予約が数ヶ月先まで埋まっている可能性もあるため、早めに登録しておくのが良いでしょう。

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