介護保険制度は、2006年4月の制度改正によってスタートした、「地域密着型サービス」によって、私たちの生活により身近なものとなりました。
「地域密着型サービス」は、市町村が運営主体となっており、利用者は、住み慣れた地域と切り離されることなく、馴染みやすい環境下の中でサービスを受けることができます。
今回は、「地域密着型サービス」の特徴や、サービスの種類等についてご紹介したいと思います。

目次

地域密着型サービスとは

介護保険サービスは、利用者が保険給付をどこで受けるかによって、大きく3つに分類することができます。

・居宅サービス
在宅で受けるサービス。

・施設サービス
介護保険施設(「特別養護老人ホーム」「介護老人保健施設」「介護療養型医療施設」「介護医療院」)に入所して受けるサービス。

・地域密着型サービス
住み慣れた地域での生活を継続できるよう支援することを目的とし、事業所や施設がある市町村に住まいのある方に提供されるサービス。

介護サービスは、これまで、「在宅か施設のどちらか」に捉えがちな傾向にありました。しかし、2006年4月の介護保険制度改正により、居宅サービスと施設サービスの中間に位置し、身近な市町村で提供されることが適当なサービスの類型として、「地域密着型サービス」が創設されました。
「地域密着型サービス」は、サービスの運営主体が市町村になります。地域単位で必要なサービスが整備されており、地域の実情に応じた施設基準や人員基準、介護報酬等が設定されています。
地域に寄り添った介護サービスということもあり、施設は比較的小規模なものが多く、利用者一人一人のその時の状況や要望に合わせて細かく対応することが可能です。

■地域密着型サービスのメリット
‣利用者の心身の状態や、細かい悩み・要望に応じてくれる。
‣施設が小規模であるため、スタッフや他の利用者と顔なじみになりやすく、家庭的で手厚い介護が受けられる。
‣自分が住んでいる市町村の施設を利用することになるため、家族や地域住民の方と交流を図りやすい。
‣保険者が市町村であるため、自分が納めている保険料でサービスを受けられるということがはっきりしている。

■地域密着型サービスのデメリット
‣介護保険サービス事業を各市町村が独自に進められるようになったことで、自治体間でサービス格差が生じている。
‣希望するサービスを行っている自治体(施設が充実した地域)に住民票を移す、あるいは引っ越しするケースも多くみられることから、「介護が必要になっても、住み慣れた地域での暮らしを継続する」という、地域密着型サービス本来の目的から外れてしまう場合がある。

地域密着型サービスのデメリットに関しては、自治体ごとにさまざまな対策が立てられており、住民票を移しても、そこの地域に一定期間住んでいなければ、サービスを受けることができなかったり、サービスを提供する施設に、「入居事前届出書」の提出を義務化しているところもあったりします。

地域密着型サービスの種類

地域密着型サービスは全部で10種類あります。

①定期巡回・随時対応型訪問介護看護
随時の訪問看護及び訪問介護サービスや定時の巡回サービスを行う。1つの事業所で、介護職員による訪問介護と、看護職員による訪問看護の両方を提供する「一体型」と、訪問介護を提供する事業所が、訪問看護を行っている事業所と連携してサービスを提供する「連携型」がある。

②夜間対応型訪問介護
夜間帯に、訪問介護サービスを行い、緊急時の相談にも応じることができる。定期巡回・随時対応型訪問介護看護サービスの「訪問看護」がないサービスと考えて良い。

③地域密着型通所介護
居宅要介護者に老人デイサービスセンター等へ通ってもらい、食事・入浴・排泄等の介護やその他日常生活上の世話、相談・助言、機能訓練などを提供するサービス。従来の通所介護事業所のうち、利用定員18人以下の小規模型のものが、2006年度より地域密着型サービスに移動した。

④認知症対応型通所介護
認知症の居宅要介護者に、老人デイサービスセンター等へ通ってもらい、食事・入浴・排泄等の介護やその他日常生活上の世話、相談・助言、機能訓練などを提供するサービス。(認知症の方限定の通所介護)ここでいう「認知症」は、「脳血管性認知症、アルツハイマー病その他の要因に基づく脳の器質的な変化により、日常生活に支障が生じる程度にまで記憶機能およびその他の認知機能が低下した状態」とされている。(介護保険法第5条の2)

⑤小規模多機能型居宅介護
居宅要介護者の心身の状況や置かれている環境、要望などに応じて、通いによるサービス(通所介護)を中心に、訪問介護や短期入所生活介護を組み合わせ、食事・入浴・排泄等の介護やその他日常生活上の世話、生活等に関する相談・助言、機能訓練、リハビリテーション等を行う。

⑥認知症対応型共同生活介護(認知症高齢者グループホーム)
認知症の要介護者が共同で生活できる住居において、食事・入浴・排泄等の介護やその他日常生活上の世話、機能訓練、リハビリテーション等を行う。一つの共同生活住居につき定員は5人~9人の少人数で、家庭的な雰囲気の中、サービスを受けることができるのが特徴。

⑦地域密着型特定施設入居者生活介護
利用定員29人以下の特定施設(有料老人ホーム、養護老人ホーム、軽費老人ホーム)を「地域密着型特定施設」といい、これらの施設に入居している要介護者に対し、食事、入浴、排泄等の介護や、療養上の世話、機能訓練等を行う。
また、空いている居室に利用者を受け入れて介護サービスを提供する、短期利用(30日以内)の類型もある。

⑧地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護(地域密着型特別養護老人ホーム)
入所定員29人以下の介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)の利用者に対し、地域密着型施設サービス計画に基づいて、食事、入浴、排泄等の介護や、療養上の世話、機能訓練、健康管理等のサービスを提供する。

⑨看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)
「訪問看護」と「小規模多機能型居宅介護」を柔軟に組み合わせ、「通い」・「訪問」・「泊り」のサービスを一体的に提供することで、比較的医療ニーズの高い利用者が、可能な限り自立した生活を送れるように支援する。

⑩共生型地域密着型通所介護
高齢者と障害者(児)が共に利用できる同一事務所において、食事、入浴、排泄等の介護や、その他日常生活上の支援、生活機能訓練といったサービスの提供を受け、利用者の心身の機能向上や家族の負担軽減等を図る。

また、要支援者が、要介護状態になるのをできる限り防ぐことを目的とし、住み慣れた地域での生活を続けられるよう支援する、いわゆる地域密着型サービスの予防版として、「地域密着型介護予防サービス」があります。
「地域密着型介護予防サービス」は、次の3種類のサービスがあります。

①介護予防認知症対応型通所介護
介護予防を目的とし、認知症の症状がある要支援者が、デイサービスセンターなどに通い、食事、入浴、排泄等の介護や、その他日常生活上の支援、機能訓練等を行う。

②介護予防小規模多機能型居宅介護
介護予防を目的とし、訪問介護や通所介護、短期入所生活介護を組み合わせ、食事・入浴・排泄等の介護やその他日常生活上の世話、生活等に関する相談・助言、機能訓練、リハビリテーション等を行う。

③介護予防認知症対応型共同生活介護
介護予防を目的とし、認知症の要介護者が共同で生活できる住居において、食事・入浴・排泄等の介護やその他日常生活上の世話、機能訓練、リハビリテーション等を行う。

地域密着型サービスの対象者

「地域密着型サービス」の対象者は、原則、要介護1~5の認定を受けており、サービス事業者がある地域と同じ住所に住民票がある方に限ります。
また、「地域密着型介護予防サービス」の場合は、要支援1、2の認定を受けており、サービス事業者と同じ住所に住民票がある方に限ります。

ただし、施設によっては、原則、要介護3以上の認定を受けた方が対象となる「地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護(地域密着型特別養護老人ホーム)」や、認知症の症状がある要支援2の方のみが対象となる、「介護予防認知症対応型共同生活介護」などがあるため、注意するようにしましょう。

地域密着型サービスの利用方法

介護保険サービスを利用するには、まず要介護認定を受ける必要があります。まだ受けていないという方は、要介護認定の申請から行うようにしましょう。

サービス利用までの手順は、以下のような流れになります。

①要介護認定の申請
申請場所は、各市町村の介護保険担当の窓口になります。申請の際は、地域包括支援センターなどに代行をお願いすることも可能です。

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②訪問調査
申請後、市町村から派遣された調査員が利用者の自宅を訪問し、本人の心身の状態や普段の様子、生活状況などの聞き取り調査を行います。

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③認定結果の通知
要介護認定の申請から1ヶ月程度で要介護認定の結果が届きます。

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④ケアプランの作成
「要介護1~5」と認定された方は居宅介護支援事業者に、「要支援1・2」と認定された方は地域包括支援センターに、ケアプラン(介護保険サービスを利用する際の利用計画書)の作成を依頼します。

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⑤サービスの利用開始

また、既に要介護認定を受けている方は、まずは担当のケアマネジャーに相談するようにしましょう。その後、 希望している地域密着型サービスを提供する事業所や空き状況等を確認し、事業所と契約します。契約後は、事業所に所属するケアマネジャーに担当が変わり、ケアプランを作成することになります。

運営推進会議について

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地域密着型サービスを提供する事業者は、「運営推進会議」の設置が義務付けられています。
「運営推進会議」は、利用者の家族や地域住民の代表者、市町村の職員などに対し、提供しているサービスの内容を明らかにします。オープンなやり取りを行うことで、以下の項目を主な目的として設置されています。

・事業所運営の透明性の確保
・サービスの質の確保
・事業所による「抱え込み」の防止
・地域との連携の確保を達成

利用者や利用者の家族、地域住民の代表者、事業所がある市町村の職員または地域包括支援センター職員などが参加し、下記のような内容を取り上げていきます。(運営推進会議の議題や内容については、法律上、特に決まりはない)

・運営状況の報告(日々の活動内容や利用者の様子などについて)
・事業所の運営方針や特色等
・苦情、ヒヤリハット、事故等の報告(発生件数や発生防止のための対策など)
・職員研修等への取り組み状況
・人員体制、人事異動
・事業所の活動状況について、出席者からの評価
・会議の参加者から、事業所への要望や、意見聴取
・地域住民やボランティア団体等との連携状況
・災害時の取り組みや避難手順、情報連携 など

運営推進会議では、サービス事業者からの一方的な報告だけでなく、参加者の方から、意見や要望、課題等を挙げてもらう取り組みを行っているところもあります。

また、運営推進会議の開催頻度は、各サービスや事業所によって異なるものの、
‣小規模多機能型居宅介護
‣認知症対応型共同生活介護            
‣地域密着型介護老人福祉施設入居者生活介護
‣地域密着型特定施設入居者生活介護
では、おおむね2か月に1回以上、定期的に開催(年6回以上)、

‣定期巡回・随時対応型訪問介護看護
(この場合、「運営推進会議」ではなく、「介護・医療連携推進会議」となる。)
‣認知症対応型通所介護
‣地域密着型通所介護
では、おおむね6か月に1回以上、定期的に開催(年2回以上)の頻度で開催されています。

会議の内容を記録した議事録等は、作成日から一定期間保存しなければならず、また、ホームページに掲載するなど、公表が義務付けられているため、会議の内容は、参加者以外の方も知ることができるようになっています。

「運営推進会議」は、事業所と地域住民の交流を深められる場となります。また、サービスの内容が明らかになるため、利用者やその家族にとっては、事業所が提供すサービスへの〝安心と信頼〟に繋がります。

まとめ

今回は、「地域密着型サービス」についてお話させていただきましたが、いかがでしたか。

「地域密着型サービス」の最大の特徴は、住み慣れた地域で、顔なじみのスタッフから手厚い介護を受けられるというところです。ただし、市町村によっては、希望するサービスがない場合も考えられます。サービス内容等は地域によって異なるため、地域密着型サービスの利用を考えている方は、まずは担当のケアマネジャーや地域包括支援センターの相談窓口などに相談してから、事業所を探してみることをおすすめします。

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