「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」は、医療的処置が必要な要介護者の在宅生活を支えるための介護サービスです。介護・看護職員による定期的な巡回訪問と、随時対応の訪問により、必要な介護・看護サービスを利用者に提供します。随時対応訪問では、急な体調不良などによる利用者の通報に24時間365日対応しているため、利用者は安心して自宅での生活を送ることが可能です。
今回は、「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」のサービス内容や、どんな方が利用できるのかなどについてご紹介させていただきます。

目次

定期巡回・随時対応型訪問介護看護とは

「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」とは、訪問介護と訪問看護が密に連携しながら、定期的な巡回や随時訪問により、利用者の居宅において、
▪食事・入浴・排泄等の介護、その他の日常生活上の世話
▪療養上の世話または診療の補助
▪緊急時の対応
などを行い、利用者の自宅での療養生活を支援、心身の機能の維持回復を目指すものをいいます。

基本となるサービスは、以下の4つです。

▪定期巡回サービス
介護サービス計画書(ケアプラン)に基づき、訪問介護員等が定期的に利用者宅を巡回、訪問。身体介護を中心とする短時間の介護サービスを、1日複数回行う。(食事・入浴・排泄等の介護、その他日常生活上の世話(服薬管理等)、家族不在時の安否確認等)

▪随時対応サービス(24時間連絡受付業務)
利用者や家族からの緊急時(急な体調不良や転倒等)の連絡に24時間365日対応。常駐のオペレーターが、専用の端末機による通報を受け、利用者が置かれている状況等を把握し、訪問を要するかそうでないかを判断する。

▪随時訪問サービス
利用者や家族から緊急時の通報を受けたオペレーターが、訪問を要すると判断した場合、必要に応じて、訪問介護員等が利用者宅を訪問し、転倒時の対応や排泄の介助等を行う。

▪訪問看護サービス
看護職員等が利用者の自宅を訪問。医師の指示書に基づいて、療養上の世話や診療の補助等を行う。(利用者の体調不良の対応や服薬管理、インスリン注射、点滴管理、排便コントロール、褥瘡の処置等)

1日に複数回の訪問を行うことを前提としている「定期巡回サービス」ですが、具体的な訪問回数や訪問時間等に関しては、事業所と相談して決めることになっています。状況に応じて、訪問がない日をつくっても構いません。
また、「随時訪問サービス」は、通報を受けてから、おおむね30分以内に利用者の自宅に訪問できる体制を整えるよう取り組まなければなりません。これは、「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」が、介護が必要になっても、住み慣れた地域・自宅で、できる限り自立した生活を送れるよう支援することを目的とする「地域密着型サービス」の一つであるためです。

このように、「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」は、1日複数回に及ぶ定期巡回と、利用者の必要なタイミングで介護・看護サービスを提供する随時対応により、医療ニーズの高い高齢者を、介護と医療の面から24時間365日サポートし、退院後や持病のある利用者の在宅生活を支えています。

「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」には、2つの類型があります。

▪一体型
事業所が、「訪問介護」と「訪問介護」を提供している。「訪問介護」と「訪問看護」の連携がとりやすく、利用者の情報が共有しやすい。
また、看護職から介護職に対し、疾病の予防や利用者の病状の予後予測、心身の機能の維持・回復といった観点から、指導・助言を行うことができる。これにより、介護職の方は、医療の目線からも介護ができる。
利用者は、一つの事業所で、「訪問介護」と「訪問看護」の一体的なサービスを受けることができる。

▪連携型
事業所に看護師が配置されていないため、訪問看護サービスを提供する他の事業所と連携し、利用者に必要なサービスを提供する。
複数の訪問看護サービスを行う事業所と連携をとるようになるため、地域の医療状況等を把握しやすい。
ただし、「一体型」と比べて、「訪問介護」と「訪問看護」の密な連携や情報交換等は、難しい。

後程、詳しくご説明しますが、「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」の費用は、事業所が「一体型」であるか「連携型」であるかによって変わってきます。

また、「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」では、利用者の自宅に、緊急時のための通報用の機器の設置と、通報用の端末(ケアコール端末機)が配布されることになっています。ケアコール端末とは、ボタン一つで通報できる緊急通報装置のことです。電話をかけるのが難しいという方でも操作がしやすく、すぐにオペレーターに繋げることができるようになっています。

事業所に配置されている職員体制は、以下の通りです。

職種 資格要件等
オペレーター 看護師、介護福祉士、医師、保健師、准看護師、社会福祉士、介護支援専門員のいずれかの資格をもち、訪問介護のサービス提供責任者として3年以上従事した者。1人以上は常勤(支障がない場合は兼務可)。
訪問介護員等 介護福祉士、実務者研修修了者介護職員基礎研修、訪問介護員1級、訪問介護員2級のいずれかの資格をもつ者。
看護師等(一体型のみ) 保健師、看護師、准看護師を2.5人以上配置(常勤換算)。うち1名以上は、常勤の保健師又は看護師。理学療法士、作業療法士、言語聴覚士は、実情に応じて適当数配置。
計画作成責任者 従業者である看護師、介護福祉士等のうち、1人以上。
管理者 常勤・専従の方(支障がない場合は兼務可)。

定期巡回・随時対応型訪問介護看護の対象者・利用方法

対象者

介護が必要になっても、住み慣れた地域での生活を支援することを目的としている「地域密着型サービス」では、サービスを提供する事業所と同じ地域に住所がある者でないと、サービスを利用することができません。
「地域密着型サービス」の一つである「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」では、以下の条件に当てはまる方が対象となります。

・要介護1~5の認定を受けた方
・事業所のある地域に住所がある方

要支援1、2の方は利用することができません。
また、療養上の世話、もしくは必要な診療の補助については、主治医に必要と判断された方だけが受けることができます。

利用に適している人

「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」のサービスの特徴から、以下のような方が利用に適しています。

・要介護度が中度あるいは重度の方
・退院したばかり、あるいは持病などで、医療的処置が必要な方
・状態が安定せず、介護や看護が頻繁に必要な方
・1人暮らし、あるいは老老介護(65歳以上の高齢の方が、同じく65歳以上の高齢の方を介護している状態のこと)により、常時介護が必要となる方

「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」は、退院後の在宅生活が心配な高齢者や、持病があり、定期的な医療処置が必要な方、疾患があり、急変した時にすぐに対応してもらいたい方などが利用することが多いようです。
特に、一人暮らしの方で、食事や入浴、排泄する際に介助が必要な場合や、持病を持つ認知症の方で、服薬管理やインスリン注射といった医療処置を行うことが困難な場合に適しているサービスといえます。

「定期巡回サービス」では、1日複数回にわたり、訪問介護が利用できるため、服薬時間などの管理がしやすくなります。転倒や失禁なども、随時対応ですぐにかけつけてもらえるため、利用者やその家族にとって大きな安心に繋がります。
また、サービスを提供する事業所も利用者の状況が把握しやすいため、介護をする家族の負担軽減だけでなく、職員の業務軽減にもなります。

利用方法

「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」を利用するまでの流れは、以下の通りになります。

①要介護認定
サービスを利用するためには、要介護認定を受ける必要があります。申請は、各市町村の担当窓口や、地域包括支援センターなどで行うことができます。

②介護サービス利用計画書(ケアプラン)の作成
要介護認定により、「要介護1~5」と認定された方は、担当のケアマネジャーに介護サービス利用計画書(ケアプラン)の作成を依頼します。介護サービス利用計画書(ケアプラン)の内容は、利用者や家族が承諾するまで見直されます。

③サービスの利用開始
介護サービス利用計画書(ケアプラン)完成後、事業所と契約し、サービスの利用が開始されます。

定期巡回・随時対応型訪問介護看護の費用

「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」の費用(基本料金)は、サービスの利用頻度に関わらず、月額定額制となります。

例えば、「訪問介護」や「訪問看護」といったサービスをそれぞれ契約し、1日に複数回利用した場合、利用頻度が高いと、介護保険の支給限度額を超えてしまいます。

「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」では、基本料金が一定であるため、回数を気にせず、サービスを利用できるというメリットがあります。

事業所が「一体型」であるか「連携型」であるか、「一体型」を利用する場合には、訪問看護サービスを利用するか利用しないかで、一ヶ月ごとの基本料金が変わってきます。

「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」の1月あたりの基本料金(1割負担の場合)
  一体型(訪問看護サービスを行う看護師等がいる事業所) 連携型(訪問看護サービスを行う
看護師等がいない事業所)
訪問看護を行う 訪問看護を行わない 訪問看護なし
要介護1 8,287円 5,680円 5,680円
要介護2 12,946円 10,138円 10,138円
要介護3 19,762円 16,833円 16,833円
要介護4 24,361円 21,293円 21,293円
要介護5 29,512円 25,752円 25,752円

上記は、自己負担額が1割の場合の基本料金となります。所得によっては、2~3割負担となる場合があります。
「連携型」で訪問看護を受ける場合には、別の訪問看護事業所を利用することになるため、利用料が別途必要となります。
‣要介護1~4の場合は、2,945円
‣要介護5の場合は、3,745円

≪参考≫介護給付費単位数等サービスコード表(令和元年10月施行版)より

定期巡回・随時対応型訪問介護看護と併用できないサービス

「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」利用中も、他の介護保険サービスを併用することは可能です。しかし、 サービス内容が重複するという理由から、以下の介護保険サービスを併用することができません。

▶訪問介護(通院等乗降介助を除く)
「訪問介護」サービスは、「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」に含まれているため、利用することができません。
ただし、通院等乗降介助を併用することは可能です。
通院等乗降介助とは、「訪問介護」に含まれるサービスの一つで、利用者に対して、通院等のために、指定訪問介護職員等が運転する車両への乗車または降車の介助、病院の通院、通院先や外出先での受診等の手続き、移動等の介助を行うものをいいます。

▶訪問看護(連携型利用時を除く)
「訪問看護」サービスは、「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」に含まれているため、利用することができません。
ただし、事業所が「連携型(訪問看護サービスを行う看護師等がいない)」の場合には、「訪問看護」を併用することができます。

▶夜間対応型訪問介護
「夜間対応型訪問介護」は、夜間での定期的な巡回訪問と随時の対応を行うサービスです。(訪問看護なし)「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」とサービス内容が重複するため、併用することはできません。

まとめ

今回は、「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」についてお話させていただきましたが、いかがでしたか。
24時間365日対応可能な「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」は、仕事と介護を両立しなければならない同居家族の介護負担の軽減になり、また、一人暮らしの要介護者には心強いサービスとなります。
費用も定額制のため、健康状態が安定しない方や、服薬管理やインスリン注射等の健康管理をしなければならないなど、頻繁に「訪問介護」や「訪問看護」を利用したい方は、「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」を利用した方が、費用を抑えることができます。
「疾患があり健康には不安があるが、住み慣れた地域・自宅での生活を続けたい」という方は、一度、検討してみてはいかがでしょうか。

facebook
twitter
line