「夜間対応型訪問介護」は、名称の通り、夜間の時間帯に提供される訪問介護サービスのことです。
定期巡回により訪問介護員が利用者宅を訪問し、排泄介助・就寝・起床介助、安否確認や、夜間の急な体調不良・転倒・転落などの緊急時に随時対応してくれるため、老老介護や要介護度が高くなっても利用者は安心して自宅で暮らすことができます。
そこで今回は、介護を必要とする高齢者が、24時間安心して在宅生活が送れることを目的としている「夜間対応型訪問介護」の具体的なサービス内容や、利用方法、費用などについてご紹介したいと思います。

目次

夜間対応型訪問介護とは

「夜間対応型訪問介護」とは、夜間の定期的な巡回訪問や利用者からの随時連絡により、訪問介護員(ホームヘルパー)が利用者宅を訪問して、必要な介護を行うサービスです。食事・入浴・排泄等の介護、その他日常生活上の世話(定期巡回・随時対応型訪問介護看護に該当するものを除く)、緊急時(急な体調不良、転倒・転落、便失禁等)の対応を行い、利用者が可能な限り自立した在宅生活を送れるようサポートします。
〝夜間〟とは、8時~18時(日中)以外の時間帯のことを指します。サービスを提供する時間帯は各事業所によって異なりますが、最低限22時~翌朝6時までの間は含まれます。創設時は、8時~18時(日中)の時間帯は含まれていませんでしたが、現在は、日中も含め、24時間サービスが対応できる仕組みになっています。

夜間対応型訪問介護では、次の3つのサービスが提供されます。

定期巡回サービス
ケアプラン(介護サービス計画)に基づき、訪問介護員(ホームヘルパー)が、決められた時間帯に利用者宅を巡回・訪問し、短時間の介護サービスを行います。
※夜間のおむつ交換・排泄介助、就寝・起床介助・身体の清拭・安否確認等

オペレーションサービス(随時対応サービス)
24時間365日常駐のオペレーター(看護師、介護福祉士など資格所持者が担当)が、利用者や家族からの緊急時の通報を受け、利用者宅への訪問の必要性を判断します。利用者には、契約時などに、サービス事業所から、緊急時の通報に使用する「ケアコール端末」が配布されており、ボタンを押すだけの簡単な操作で、オペレーションセンターにすぐ連絡できるようになっています。通報を受けたオペレーターは、相談内容と利用者の心身の状態を把握したうえで、必要に応じ、利用者宅への訪問や救急車の出動要請、適切なアドバイス等を行います。
※ここでの『緊急時』とは・・・夜間の急な体調不良や転倒、失禁など

随時訪問サービス
ケアコール端末機を持つ利用者や家族から連絡を受けたオペレーターが、利用者宅への訪問が必要であると判断した場合に、訪問介護員(ホームヘルパー)が利用者宅を訪問し、必要な介護サービスを行います。
※失禁や嘔吐、転倒時の対応等

また、夜間対応型訪問介護の職員体制は以下の通りです。

【オペレーター】
・提供時間帯を通じて1人以上配置。
※医師、保健師、看護師、准看護師、介護福祉士、社会福祉士、介護支援専門員(ケアマネジャー)などの資格所持者。

【面接相談員】
・1以上配置
※オペレーター又は訪問介護員等との兼務は可能。
※オペレーターと同資格、または同等の知識経験あり。

【訪問介護員等】
・定期巡回サービスを行う訪問介護員等:必要な数以上配置。
随時訪問サービスを行う訪問介護員等:提供時間帯を通じて1以上配置。
訪問介護員等として必要な資格を持つ方。
※資格
‣介護福祉士
‣介護職員初任者研修修了者(看護師等、実務者研修修了者含む)
‣旧介護職員基礎研修課程修了者・旧1級課程修了者
‣旧2級課程修了者

【管理者】
・1人

夜間対応型訪問介護のオペレーションセンターは、概ね利用者300人につき1カ所以上設置されていますが、オペレーターと定期巡回サービスを行う訪問介護員が一緒に車で移動するセンターを設けないタイプも認められています。
このサービス利用の際には、事業所側から端末機(ケアコール端末など)が配布されますが、適切に通報を行える場合に限り、一般の家庭用電話や携帯電話をケアコール端末として代用することもできます。

夜間対応型訪問介護の対象者・利用方法

夜間対応型訪問介護は、地域密着型サービスの一つです。
地域密着型サービスとは、地域包括ケアシステムを推進するために創設された介護サービス群のことです。サービス事業者を指定・監督する権限は市町村にあり、各地域の特性(高齢者の割合や病院の数など)に応じて、介護サービスの整備等を行います。
※地域包括ケアシステムとは
介護を必要とする高齢者が、残された能力を活かし、住み慣れた地域で、可能な限り自立した日常生活を営むことができるよう、医療・介護・介護予防・住まい・自立した日常生活の支援が包括的に確保される体制

地域密着型サービスの対象者は、原則、利用するサービス事業所と同じ市町村に住んでいる、「要介護1以上」の認定を受けた方となります。
つまり、地域密着型サービスの一つである夜間対応型訪問介護の対象者は、サービス事業所と同じ市町村に住所があり、要介護認定により、要介護1~5の認定を受けた方に限られます。
自立、要支援1、要支援2と認定された方や、利用したい事業所と違う市町村に住んでいる方は、原則、夜間対応型訪問介護を利用することができません。
また、高齢者の在宅での生活を支援するためのサービスであることから、グループホームや有料老人ホームなどの特定施設に入所している方や、ショートステイを利用している方などは、夜間対応型訪問介護を利用することができません。

夜間対応型訪問介護の利用を希望する際は、まず、夜間の介護サービスが必要であることを、担当のケアマネジャーか、地域包括支援センターに相談します。ケアマネジャーは、利用者の状態等を把握したうえで、課題を整理し、利用者に適切なケアプラン(夜間対応型訪問介護計画)を作成します。利用者がケアプランの内容に納得し、承認されると、夜間対応型訪問介護を提供している事業所と契約を交わし、サービスが利用できるようになります。

夜間対応型訪問介護の費用

夜間対応型訪問介護の費用は、オペレーションセンターが設置されている場合(夜間対応型訪問介護費(Ⅰ)) と、設置されていない場合(夜間対応型訪問介護費(Ⅱ))で異なります。
オペレーションセンターが設置されている事業所では、「基本サービス費+定期巡回と随時訪問の回数による合計」オペレーションセンターが設置されていない事業所では、「1ヶ月の定額制」となっているため、利用する事業所がどちらであるか確認するようにしておきましょう。

夜間対応型訪問介護 利用料(1割負担の場合)
オペレーションセンター
設置あり
オペレーションセンター
設置なし(1ヵ月あたり)
基本サービス(1ヵ月) 1,013円 2,751円
定期巡回サービス(1回) 379円
訪問介護員1人対応(1回) 578円
訪問介護員2人対応(1回) 778円

≪参考≫介護給付費単位数等サービスコード表(令和元年10月施行版)より

夜間対応型訪問介護のメリット・デメリット

【メリット】
・夜間に急に体調が悪くなった時や不安を感じた時、すぐに通報できる。
・夜間に排泄介助や就寝・起床介助等が受けられる。
・転倒や転落などの緊急時に、すぐ対応してもらえる。
・仕事で家族の帰りが夜遅くても、サービスを利用することができる。

【デメリット】
・オペレーションセンターが設置されている事業所の場合、1回利用するごとに料金が加算されるため、サービスの利用回数が多いと、支給限度基準額を超えてしまう場合がある。
・原則として、事業所のある市町村の住民のみしかサービスを利用することができない。

夜間対応型訪問介護は、夜間の定期巡回サービスと緊急時の対応が最大の魅力です。特に1人暮らしをしている要介護者にとって、夜間は不安を抱えやすくなる時間帯です。しかし、夜間対応型訪問介護では、緊急時や困った時などに、夜間でもすぐ誰かに相談することができるという安心感があります。
また、同居家族が介護をしている場合、仕事などで家族の帰りが遅くなる日だけ訪問スタッフを呼ぶことができるため、スポット的にサービスを利用できるというメリットもあります。
1人暮らしの高齢者だけでなく、介護をしている同居家族や、老老介護(65歳以上の高齢者が、同じく65歳以上の高齢者を介護している状態のこと)の家庭にとっても、心強いサービスといえます。
オペレーションセンターがある事業所では、1ヶ月の基本料金に、サービスを利用した回数分の料金がプラスされることによって1ヶ月の利用料金が決まるため、訪問スタッフに来てもらう回数が多いほど、料金は高くなります。介護保険サービスには、要介護度ごとに、1ヵ月あたりのサービス費用の上限額が設けられており(支給限度基準額)、利用者はその範囲内でサービスを利用しなければ、超えた分は全額自己負担となります。

夜間対応型訪問介護と定期巡回・随時対応型訪問介護看護の違い

次に、「夜間対応型訪問介護」と、「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」の違いについてご説明させていただきます。
「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」は、「夜間対応型訪問介護」と類似したサービスであるため、混同しやすい方も多いと思います。
大きな違いとしては、「夜間対応型訪問介護」が「介護」のみ受けられるのに対し、「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」では、「介護」と「看護」が受けられるのが特徴です。

 ■夜間対応型訪問介護

▪サービス(定期巡回サービス)を提供する時間帯が18時~翌朝8時の夜間に限定されている
▪オペレーションセンターがある事業所では、呼び出し回数が多いほど料金が加算される
▪医療対応ができない

 ■定期巡回・随時対応型訪問介護看護

▪365日24時間対応可能
▪「介護」と「看護」の両方を受けることができる
▪看護師や理学療法士といった専門職の訪問があり、医療ニーズに対応している

「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」は、月額定額制であるため、サービス利用回数が少ない方は、費用負
担が増えることになります。この場合、利用回数にもよりますが、「夜間対応型訪問介護」の方が、「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」よりも出来高払いであるため、費用を抑えることができます。
ただし、24時間加算の追加や、利用回数が増えてしまうと、1ヶ月の支給限度基準額を超えてしまうこともあるため、担当のケアマネジャーに相談するようにしましょう。

まとめ

今回は、「夜間対応型訪問介護」についてお話させていただきましたが、いかがでしたか。

夜間対応型訪問介護は、不安になりやすい夜間に定期的に巡回してもらえることや、急なトラブルにも対応してもらえるというメリットがあります。安否確認も行ってくれるため、利用者だけでなく、離れて暮らしている家族にも安心を与えてくれるサービスと言えるでしょう。
ただし、利用回数が多いと、介護保険の支給限度額を超えてしまう可能性があります。担当のケアマネジャーと相談しながらサービスを利用するようにしましょう。

facebook
twitter
line