「医療型デイサービス(療養通所介護)」は、介護と医療どちらも必要とする高齢者が、職員の送迎で施設に通い、日帰りで入浴や食事などの介護や医療的ケアを受けることができるサービスです。看護職員が手厚く配置されており、医師の指示の下、医療専門のスタッフによって、医療ニーズの高い要介護者に配慮されたケアを行っています。

今回は、「医療型デイサービス(療養通所介護)」の対象者や費用などについてご説明させていただきます。

目次

医療型デイサービス(療養通所介護)とは

「医療型デイサービス(療養通所介護)」とは、居宅の要介護者が、事業所の職員による送迎で、自宅から、老人デイサービスセンターや特別養護老人ホーム、老人福祉センターなどに通い、以下のようなサービスを日帰りで受けられるものをいいます。

  • 食事、入浴、排泄、その他日常生活の介助
  • 入浴や清拭等による身体の清潔保持
  • 食事の提供
  • 機能訓練
  • 生活や介護に関する相談の対応や援助等の生活指導
  • (看護師による)利用者の心身の健康状態の把握
  • 医療機器の管理
  • 送迎  など

上記の内容の通り、医療型デイサービスは、常時看護の見守りが必要な中重度の要介護者等を対象とし、医療・介護ニーズを併せ持つ、通所型のサービスです。具体的には、末期がんや難病、重度の認知症、脳疾患の後遺症、在宅酸素療法(HOT)・胃ろう・留置カテーテル等の医療処置などで、通常のデイサービス(通所介護)の利用が困難であり、医療ニーズが高い方の利用に適しています。

引きこもりがちな高齢者の外出を促すきっかけにもなり、利用者の心身の機能の維持や、社会的孤立感の解消、家族(介護者)の身体的・精神的負担の軽減を図ることも可能です。

「医療型デイサービス(療養通所介護)」は、居宅サービスの一つである〝地域密着型通所介護〟に含まれており、「地域密着型サービス」が創設された平成18年度に、地域密着型通所介護としてスタートしました。「地域密着型サービス」とは、高齢者が要介護状態となっても、できる限り住み慣れた地域での生活を継続できるよう支援することを目的とし、身近な地域で提供されるサービスをいいます。 医療型デイサービス(療養通所介護)提供する事業所では、障害福祉サービス等を実施しているところが多いということを踏まえ、更に地域共生社会の実現に向けた取組を推進するという観点から、それまで利用定員「9名以下」であった医療型デイサービス(療養通所介護)は、平成30年度には、利用定員が「18名以下」に引き上げられています。

職員体制

管理者 常勤専従の看護師であること
看護職員又は介護職員の数 ▪提供時間帯を通じて、利用者1.5人に対し、療養通所介護の提供に当たる者が1人以上
▪職員のうち、1人以上は療養通所介護の職務に従事する常勤の看護師

医療型デイサービスを含む通所型の強み

「医療型デイサービス(療養通所介護)」のように、自宅から施設に通い、日常生活上の支援や機能訓練などを日帰りで受けられるサービスを、「通所型サービス」といいます。「通所型サービス」には、「医療型デイサービス(療養通所介護)」の他に、以下のようなサービスがあります。

通所介護(デイサービス)

職員の送迎で、自宅からデイサービスセンター等の施設に通い、食事・入浴・排泄等の介護や、その他必要な日常生活上の支援、食事の提供、健康管理、レクリエーション、機能訓練等を受けられるサービス。

通所リハビリテーション(デイケア)

自宅から病院や老人保健施設等の施設に通い、理学療法士や作業療法士などの専門職から、リハビリテーションや機能訓練、医療的ケアを受けることができるサービス。

認知症対応型通所介護

認知症の方を専門とするデイサービス。職員の送迎で、自宅からデイサービスセンターや特別養護老人ホーム等に通い、食事・入浴・排泄等の介護や、その他必要な日常生活上の支援、食事の提供、健康管理、機能訓練等を受けることができる。(ただし、認知症の原因となっている疾患が急性の状態にある場合は、対象外となる。)

これら通所型サービスの強みとしては、以下の2点が挙げられます。

利用者と職員が一緒に過ごす時間が長い

1日のうちサービスを利用している時間が長いこと、また、週に2回以上サービスを利用している人の割合が高いということから、通所型サービスは、利用者と職員が一緒に過ごす時間が長いという特徴があります。特に認知症など中重度の要介護者は、時間帯や日によって容態が変化するため、例えば、入浴や食事を摂るのが難しい状態にある場合、あるいは、本人が介護拒否をした場合でも、少し時間が経てば受け入れてくれることもあります。

このように、職員は、利用時間の長さを活かして利用者の状態に臨機応変に対応することが可能です。また、利用者とは月や年単位で継続的に関わっていくため、利用者の様子を長い期間で把握することができます。今後どのような支援が必要となってくるかなど、専門的な意見を聞きながら、機能訓練や予防に生かすことが可能です。

利用者の家族(介護者)と職員との関りがある

通所型サービスは、送迎時や連絡帳等を通じて、職員と利用者の家族(介護者)との接点も多いのが特徴です。例えば、職員が家族(介護者)の疲れた様子に気付く、あるいは家族(介護者)から直接相談を受けた場合などに、ケアマネジャーと連携し、サービス内容の見直しを行うことで、介護者の負担軽減を図っていきます。

また、利用者に対するケアの方法等に関する情報を家族(介護者)に提供し、職員と家族(介護者)がともに実践してみるなど、より利用者に適したケアを提供できるようにするための環境を整えることができるのも、通所型サービスの強みと言えます。

医療型デイサービス(療養通所介護)の対象者・利用方法

対象者

要介護認定により、要介護1~5の認定を受けた方で、末期がんや難病、気管切開、留置カテーテル、インスリン注射といった医療的ケアを必要とする方が対象となっています。

また、地域密着型サービスであるため、サービスを提供する事業者と同一の地域に住んでいる方のみが利用することが可能です。

尚、要支援1、2の認定を受けている方や、事業所がある地域とは別のところに住んでいる方は、サービスの対象外となります。

利用方法

  1. 担当のケアマネジャーや訪問看護師、地域包括支援センターに相談する。
  2. 介護保険サービスは、原則、要介護認定がないと利用することができないため、まずは、各市町村の介護保険担当の窓口に、要介護認定の申請を行う。(代理人による申請も可)
  3. 要介護認定後、利用したい施設(サービス提供事業者)の候補となるものをいくつか選び、可能であれば見学や体験入所に申し込み、希望する施設を決める。
  4. ケアマネジャーとともに、介護サービスの計画書であるケアプランを作成。ケアプランの内容が決まり次第、サービスの利用が開始される。

医療型デイサービス(療養通所介護)の費用

医療型デイサービス(療養通所介護)の費用は、要介護度に関わらず、利用時間に応じて以下の金額が設定されています。

1回ごとの基本料金
所要時間3時間以上6時間未満の場合 1,012円
所要時間6時間以上8時間未満の場合 1,519円

※自己負担額1割の場合。所得状況に応じて、2~3割負担の場合もある。

上記の金額の他に、食費やおやつ代、おむつ代、日常生活費等、別途かかるものもあります。

また、「医療型デイサービス(療養通所介護)」にかかわる加算は、下記のものがあります。

個別送迎体制強化加算

看護職員を含む2人以上の従事者が、個別に利用者の送迎を行った場合は、加算対象となります。

入浴介助体制強化加算

看護職員を含む2人以上の従事者により、個別に入浴介助を行った場合、あるいは、直接介助を行わなかった場合でも、入浴中の利用者の観察(自立生活支援のための見守り援助)を行った場合に、加算対象となります。

医療型デイサービス(療養通所介護)の一日の流れ

医療型デイサービス(療養通所介護)の一日の流れは以下の通りです。ただし、一日のスケジュールは事業所によって異なるため、興味のある方は各事業所に問い合わせてみるようにしましょう。

送迎 (お迎え)
職員が、送迎バスで、利用者の各自宅まで迎えに行きます。

健康チェック
検温・体温測定・脈拍測定・血圧測定・排泄量の管理等を行い、利用者の心身の状態の確認を行います。

リハビリ(簡単な体操など)

入浴や絵クリエーション等の実施
必要に応じて導尿や摘便などを行います。

昼食(食事の提供・食事介助、経管栄養)
施設の利用者全員で、昼食をとります。

食後のケア、医療処置等
口腔内のケアや、排泄の介助等を行います。食後しばらくは、利用者がくつろぐ時間となります。また、主治医の指示に基づき、インスリン注射や褥瘡管理等、必要な医療処理があれば対応します。
利用者がくつろいでいる時間帯は、昼寝や映画鑑賞を行うところもあります。

個別のリハビリ、レクリエーション等
理学療法士や作業療法士等の専門職による、個別のリハビリやレクリエーションを実施します。

送迎(帰宅)
職員が、送迎バスで、利用者を各自宅まで送ります。その際は、利用者の家族(介護者)に利用者の状況等を報告します。

医療型デイサービス(療養通所介護)のメリット・デメリット

メリット

  • 利用定員が18名以下と少人数のため、職員と利用者が顔なじみになりやすい環境にある
  • 介護・看護職員の配置が手厚く、医療処置が必要な方も安心して通うことができる

デメリット

  • 医療型デイサービス(療養通所介護)を提供する施設の数が少ない

これまでご説明してきたとおり、医療型デイサービス(療養通所介護)は、医療的ケアの側面が強いなど、さまざまメリットがある反面、全国的にみても事業所数が少ないというデメリットもあります。サービス創設時と比較すると事業所の数は伸びてきてはいるものの、最近は、ほぼ横ばい状態が続いています。そのため、サービスを利用したくても、そもそも医療型デイサービス(療養通所介護)を提供している事業所がないという場合もあります。

まとめ

今回は、「医療型デイサービス(療養通所介護)」についてお話させていただきましたが、いかがでしたか。

「医療型デイサービス(療養通所介護)」は、介護と医療、両方の支援を必要とする、居宅要介護者に対応したデイサービスです。利用者数が少なく、送迎も職員が行うため、スタッフと顔なじみになりやすく、要介護者の不安を取り除きやすいというメリットもあります。 介護者の負担軽減の為にも、「医療型デイサービス(療養通所介護)」の利用を検討してみてはいかがでしょうか。

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