「居宅介護支援」とは、自宅で介護サービスを利用する方の心身状況や生活環境、家族の要望を受け、ケアマネジャー(介護支援専門員)が、利用者やその家族がもつニーズ(生活課題)を把握したうえでケアプランを作成し、介護サービスを提供できるよう支援することをいいます。
ケアプランは、作成されるだけでなく、見直しが行われることもあります。
ケアマネジャーは、このケアプランに基づき、サービス事業者との連絡や調整をすすめています。
今回は、「居宅介護支援」の対象となる条件や利用可能となるサービスなどについてご紹介します。

目次

居宅介護支援とは

「居宅介護支援」とは、居宅の要介護者が適切な介護サービスを受けられるよう、ケアマネジャーがケアプランを作成し、サービスを提供する事業者と連絡、 調整を行うものをいいます。
ケアプランとは、「居宅サービス計画」ともいい、 心身の状況や生活環境、本人や家族の要望等を考慮して作成する必要があります。

対象者: 自宅※で介護サービスを利用する、要介護1以上の認定を受けた方
目的 : 利用者の自宅での生活を支援し、QOL(生活の質)を高めること

※ここでいう「自宅(居宅)」とは、利用者の自宅だけを指すのではなく、制度上、「自宅(居宅)」とされる住宅型有料老人ホームや、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)、軽費老人ホームなども含まれます。

■居宅介護支援事業の基本方針

居宅における自立支援
利用者が可能な限りその居宅において、その有する能力に応じ、自立した日常生活を営むことができるよう配慮して行われるものでなければならない。

利用者自身によるサービスの選択、及び効率的なサービスの提供
利用者の心身の状況、置かれている環境等に応じ、利用者自らの選択に基づき適切な保健医療サービス及び福祉サービスが、多様な事業者から、総合的かつ効率的に提供されるよう配慮して行われなければならない。

公正中立
利用者の意思及び人格を尊重し、常に利用者の立場に立って、提供されるサービスが特定の種類・事業者に不当に偏することのないよう、公正中立に行われなければならない

関係機関との連携努力義務
利用者が所在する市区町村、地域包括支援センター、老人介護支援センター、他の居宅介護支援事業者、介護保険施設との連携に努めなければならない

■居宅介護支援事業者の人員配置

職種 要件等
ケアマネジャー(介護支援専門員) ・1人以上が常勤
・利用者が35人増えるごとに1人増員
※増員の場合は非常勤でも可
管理者 ・主任ケアマネジャー(主任介護支援専門員)
・常勤

介護保険サービスを利用するためには、要介護認定を受けるだけでなく、ケアプランの作成が必要です。また、 自宅で介護サービスを利用する要介護者は、要介護認定を受けた後、居宅介護支援事業者にケアプランの作成を依頼することになります。
尚、 介護認定により、「要支援1、2」の認定を受けた方の場合は、「介護予防サービス計画(介護予防ケアプラン)」の作成を地域包括支援センターに依頼することになります。
※居宅予防支援事業所に業務委託している場合もある

居宅介護支援の流れ

要介護1~5に認定された方は、介護給付(予防給付)によって、介護サービスを受けることができます。介護サービスは、ケアプランに基づいて提供されます。ケアプランは、家族で作成することもできますが、基本的にはケアマネジャーが作成します。
「居宅介護支援」の流れは以下の通りです。

▪アセスメント(課題分析)
利用者の心身の状況や居住環境、家族の状況、利用者や家族の希望等を調査・把握し、利用者の解決すべき生活課題(ニーズ)を明らかにします。
例えば、「日中、なかなか目を離すことができず、家族の負担が大きい」、「本人が一人で過ごす時間が多い」、「自宅での入浴が難しい」など、ケアマネジャーからの質問には可能な限り具体的に答えるようにしましょう。
また、本人・家族の状況や気持ち、困っていること、今後どのように生活していきたいかなど、なるべく詳しく伝えるようにしましょう。

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▪ケアプラン(介護サービス計画)の作成
ケアマネジャーは、アセスメント(課題分析)をもとに、ケアプラン(介護サービス計画)の原案を作成します。
作成する際は、偏りが出ないよう、厚生労働省の示した 23 項目の課題分析標準項目にもとづく「課題分析票」を使用します。

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▪サービス担当者会議(ケアカンファレンス)の実施
ケアマネジャーが作成したケアプランの原案をもとに、サービス担当者会議(ケアカンファレンス)を実施します。
サービス担当者会議には、利用者やその家族、ケアマネジャー、サービスを提供する事業者、主治医などが出席し、ケアプラン原案の内容を検討していきます。
実際にサービスを受けるのは利用者ですので、本人や家族が困っていること・不安等が改善されるケアプランとなっているか、自己負担額はどのくらいかなどをしっかりチェックし、サービス内容が要望等に異なる場合には、プラン変更を依頼するようにしましょう。

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▪ケアプラン(介護サービス計画)の確定
利用者や家族がケアプランの内容に納得し承諾することで、初めてケアプランが確定となります。

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▪ケアプランの実施
ケアプラン確定後、利用者はサービス事業者と契約をし、ケアプランの内容に沿ったサービスの提供が開始されます。ケアマネジャーは、介護サービス事業者との必要な連絡・調整等を行います。

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▪モニタリング
ケアマネジャーは、サービス開始後も、定期的に利用者の自宅に訪問し、利用者や家族の状況、 サービスの実施状況等を把握します(モニタリング)。利用者の健康状態や生活環境等の変化により、提供されてい るサービスの内容が合わなくなってきたら、再度アセスメント(課題分析)をし、サービス内容の見直し、ケアプランの変更・調整を行い、利用者が常に最適な介護サービスを受けられるようにしていきます。

このように、ケアマネジャーが行う仕事には、アセスメント(課題分析)やサービス担当者会議(ケアカンファレンス)、モニタリング等があり、これらは全て「居宅介護支援」になります。「居宅介護支援」はケアマネジメントの過程で行われ、上記の一連の流れで実施されています。
利用者は、自分で居宅介護支援事業所を選んで契約を結ぶことができます。ケアプランは、契約した居宅介護支援事業所に所属しているケアマネジャーに作成してもらうことになります。

「要支援」の認定を受けた方は

要介護認定により、「要支援1、2」の認定を受けた方が対象となるケアマネジメントは、「介護予防支援」であり、予防給付によるサービス等を受けることになります。
アセスメント(課題分析)、サービス担当者会議(ケアカンファレンス)、介護予防サービス計画(介護予防ケアプラン)の作成は、「介護予防」の観点から行われ、サービスは、要介護状態への進行や症状の悪化を防ぐことを目的として提供されます。

居宅介護支援によって利用可能となるサービス

居宅介護支援により、 以下の居宅サービスを利用することができるようになります。

【訪問サービス】
・訪問介護(ホームヘルプサービス)
・訪問入浴介護
・訪問看護
・訪問リハビリテーション
・居宅療養管理指導

【通所サービス】
・通所介護(デイサービス)
・通所リハビリテーション(デイケア)

【短期入所サービス】
・短期入所生活介護(ショートステイ)
・短期入所療養介護(ショートステイ)

【その他サービス】
・特定施設入所者生活介護
・福祉用具貸与、特定福祉用具販売
・共生型訪問介護
・共生型通所介護
・共生型短期入所生活介護

【地域密着型サービス】
・定期巡回・随時対応型訪問介護看護
・夜間対応型訪問介護
・地域密着型通所介護
・認知症対応型通所介護
・小規模多機能型居宅介護
・認知症対応型共同生活介護
・地域密着型特定施設入居者生活介護
・地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
・看護小規模多機能型居宅介護
・共生型地域密着型通所介護

ケアマネジャー(介護支援専門員)は自分で選ぶ

ケアマネジャー(介護支援専門員)は、主に居宅介護支援事業者や介護施設に所属しています。探すには、市区
町村の介護保険課や地域包括支援センターなどで、一覧をもらい、連絡することになります。
以下のポイントを参考にし、自分に合うケアマネジャーを選択できるようにしましょう。

■ケアマネジャーを選ぶ際のポイント

親身になって話を聞いてくれる、相談に乗ってくれる

利用者や家族の話にしっかり耳を傾け、親身になって相談に乗ってくれること、そして、要望に沿ったケアプランを作成してくれることが大切です。

専門的知識等が豊富

介護保険制度を理解するのは難しく、利用者や家族は、介護サービスを利用するにあたり、疑問点もたくさん出てきます。そのような時に、介護に関わる知識が豊富なケアマネジャーであれば、さまざまな疑問や悩みにも明確に答えてくれるでしょう。
また、専門用語ばかり並べるのではなく、わかりやすい言葉で説明してくれる、利用者が納得するまで説明してくれるといった点も大切です。

担当する利用者に公平に接する

ケアマネジャーは何人かの利用者を受け持っています。どの利用者にも、公平に接するケアマネジャーを選ぶようにしましょう。本人と家族で接する態度が違う場合や、態度が悪い場合は、どんなに知識が豊富でも、信頼できるケアマネジャーとは言えません。

個人の情報を漏らさない

より正確なアセスメント(課題分析)のために、利用者個人のプライバシーに関わる内容を伝えることもあります。
当たり前のことですが、個人の秘密を口外するような人は、ケアマネジャーとしてふさわしくありません。

素早く対応してくれる

サービス開始後も、ケアマネジャーは、継続的に利用者宅を訪問し、利用者や家族の状況等に合わせてケアプランの見直しを行っていきます。その際に、本人や家族が何か困っていたり、要望があったりした場合に、素早く対応してくれるケアマネジャーを選ぶようにしてください。サービスを開始したことで、家庭内の役割や地域社会との繋がりはどのように変化したか等、利用者の状況をさまざまな視点から考えられる方であれば、尚良いで しょう。

介護保険はケアプランが無ければ利用することができない

要介護1~5を対象としている介護給付サービスには、居宅サービス以外にも、施設サービスや地域密着型サービスがあります。
介護保険のサービスを利用する場合は、在宅の場合でも施設の場合でも、まずは要介護認定を市町村へ申請し、
判定後、ケアプランを作成して、そのプランに沿ったサービスを受けなければ、給付を受けることはできません。
ケアプランは、居宅において、どのような介護サービスを、いつ、どのくらい利用するかなどを決め、利用者に適切なサービスを効率よく使えるようにします。
介護サービス利用者のこれからの生活を左右するケアプランの作成をするのは、ケアマネジャー(介護支援専門員)です。利用者が介護生活を送っていくうえで、大きな役割を果たすことから、信頼できるケアマネジャー(介護支援専門員)を選ぶことがかなり重要となるでしょう。
そのため、最終的には、本人や家族が望んでいる日常生活が送れるように、ケアプランの内容に納得がいかなければ、ケアマネジャーにしっかり伝える必要があります。

ちなみに、ケアプランの作成は、介護保険で支払われるため、費用が発生することはありません。居宅介護支援事業者に依頼するだけでなく、本人や家族が作成し(セルフケアプラン)、それを市町村に届け出ても良いことになってい
ます。

まとめ

今回は、「居宅介護支援」についてお話させていただきましたが、いかがでしたか。
「居宅介護支援」とは、居宅要介護者を対象としたケアマネジメントのことで、介護保険サービスを利用する際の主軸となるものです。
「居宅介護支援」は、利用者が介護を必要となっても、できる限り自立した日常生活を送れるよう支援することを目的としています。ケアプランが確定し、サービスの提供が開始しても、本人の健康状態や生活環境の変化等に合わせてケアプランの見直しも行われます。
介護サービスの利用や居宅介護支援の一連の流れにおいて、何か困ったことがあれば、すぐに担当のケアマネジャーに相談するようにしましょう。

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