介護サービスの利用頻度が高ければ、たとえ、1割負担であったとしても経済的にサービス利用し続けていくことが難しくなる可能性があります。
このような利用者の負担を軽減するしくみとして、「高額介護(予防)サービス費制度」があります。
介護保険サービスの利用者負担には、利用者や世帯の所得に応じて上限額が設定されており、利用者全員一律という訳ではなく、上限を超えて支払ったものに関して、後から払い戻しをすることができます。
今回は、「高額介護(予防)サービス費制度」の特徴や、申請方法などについてご紹介します。

目次

高額介護(予防)サービス費制度とは

介護保険サービス利用の際に利用者が負担する費用は、費用全体の1割(一定以上の所得がある場合は2~3割負担)となっています。利用者は、自分が希望するサービスを組み合わせながらサービスを受けますが、介護サービスの利用頻度が高ければ、必然的に利用者の負担は増えていくことになります。
このような介護サービス利用者のための負担軽減策の一つに、「高額介護(予防)サービス費」という制度があります。利用者個人・世帯の所得に応じて負担上限額が決められており、この負担上限を超えた分を「高額介護(予防)サービス費」として、後から払い戻しすることができます。

高額介護(予防)サービス費の負担上限額

「高額介護(予防)サービス費制度」は、個人の所得や世帯の所得に応じて上限が定められています。

高額介護(予防)サービス費が支給される1ヶ月の自己負担限度額は、以下の通りです。

対象となる方 負担上限額(月額)
現役並み所得者に相当する方がいる世帯の方 44,400円(世帯)
現役並み所得者に相当する方がいる世帯の方 44,400円(世帯)
世帯の全員が市区町村民税を課税されていない方 24,600円(世帯)
世帯の全員が市区町村民税を課税されていない方のうち、前年の合計所得金額と公的年金収入額の合計が年間80万円以下の方等 24,600円(世帯)
15,000円(個人)
生活保護を受給している方等 15,000円(個人)

参考:厚生労働省 リーフレット

※「世帯」とは、住民基本台帳上(各市町村が住民票をまとめたもの)の世帯員で、介護サービスを利用した方全員の合計の上限額であり、「個人」とは介護サービスを利用した本人の自己負担額の上限額を指しています。

高額介護(予防)サービス費の申請方法

介護サービスの利用開始から約3ヶ月経つと、高額介護(予防)サービス費の対象となる方には、市町村から、高額介護(予防)サービス費給付に関する通知と支給申請書が郵送されてきます。
利用者は、送られてきた申請書に必要事項を記入し、押印のうえ、市町村の担当窓口に提出します。

●申請する際に必要なもの(例)
・申請書
・印鑑(朱肉を使用するもの)
・介護保険被保険者証
・本人のマイナンバーを確認できる書類
・受取金融機関の口座情報が確認できるもの(通帳または通帳のコピー等)
・本人以外(代理人)が申請する場合は、委任状
・手続きを行う者(本人や代理人)の身元確認ができるもの(個人番号カード、パスポートなどの顔写真付き証明書1点、または、介護保険や健康保険の被保険者証、年金手帳等の顔写真のない証明書2点)

●申請書の内容
申請書の書式は市町村ごとに異なりますが、基本的には、本人の氏名、生年月日、住所、被保険者番号、個人番号(マイナンバー)、世帯構成(世帯主や世帯員の氏名、性別等)、振込先の金融機関名と支店名、口座名義人、口座番号等を記入します。

具体的な申請方法については、各自治体で異なる場合もあるため、何か不明な点があれば、申請に関する相談等を受け付けている窓口に確認すると良いでしょう。

高額介護(予防)サービス費制度の対象外となるもの

1ヶ月で支払った介護サービス費のうち、設定されている負担上限額を超えた分が高額介護(予防)サービス費の対象となります。
以下の費用は高額介護(予防)サービス費の対象にはならないため、注意するようにしましょう。

・施設サービス等を利用した際にかかった居住費、食費、日常生活費等の実費分
・福祉用具購入費、住宅改修費の自己負担分
・要介護度ごとの支給限度額を超えて利用したサービスの費用

高額介護(予防)サービス費以外で知っておきたい利用者負担軽減制度

「高額介護(予防)サービス費」以外にも、利用者の負担を軽減する制度はいくつかあります。

【高額療養費制度】
健康保険、国民健康保険、後期高齢者医療保険等の医療保険を利用して支払った医療費が、一ヶ月の上限額を超えた場合に、支払った医療費(超過分)の一部が後から払い戻される制度です。
高額療養費制度の自己負担限度額は、年齢や所得水準等に応じて設定されています。70歳以上の方には、外来だけの上限額も設けられています。
※詳細は、加入している医療保険よりご確認ください。

▪申請方法
高額療養費の支給申請書を自身が加入している公的医療保険の窓口に所定の書類(医療機関の領収書や非課税証明書など)とともに提出する。(国民健康保険であれば、市区町村の窓口。)払い戻しは、申請から約3~4ヶ月程度。

【高額介護合算療養費】
健康保険と介護保険を利用する同一世帯で、1年間(毎年8月1日~翌年7月31日まで)にかかった自己負担額の合算が、限度額を超えている場合に、超えた分が払い戻される制度です。高額介護合算療養費制度の限度額は、年齢や所得状況等に応じて設定されています。
※同一世帯でも、異なる医療保険に加入している方との合算は認められておりません。
※詳細は、各市区町村の窓口よりご確認ください。

▪申請方法
介護保険の保険者である市町村に「支給兼自己負担額証明書交付申請書」を提出。
申請を受けた市町村から「自己負担額証明書」が交付されるため、自分が属している医療保険(健康保険)の保険者に「自己負担額証明書」を添付し、支給申請を行う。

【特定入所者介護(介護予防)サービス費】
介護老人福祉施設、介護老人保健施設、などを利用した際にかかった食費や滞在費、居住費については、原則自己負担となりますが、利用者の所得状況などによって負担限度額が定められており、基準費用額(標準的な費用)との差額分が給付される制度です。実際には、介護サービス事業者や施設が利用者に代わり、給付を受けるため、対象者は、負担限度額認定証に記載された「食費」・「居住費(滞在費)」の利用日数分の金額を施設側へ支払うことになります。
※詳細は、各市区町村の窓口よりご確認ください。

▪申請方法
各市区町村の窓口へ、介護保険負担限度額認定申請書・預貯金等の額を確認できる書類・同意書等を提出。
「介護保険負担限度額認定証」が交付されるため、施設利用の際に提示する。

【社会福祉法人等による利用者負担軽減制度】
社会福祉法人等が運営主体である訪問介護や通所介護、短期入所生活介護などのサービスを利用する方で、市町村が低所得であると認定した方、または生活保護受給者を対象に、利用料の軽減を行う制度です。
軽減対象となっているサービスを利用すると、食費や居住費(滞在費)、介護費の負担が軽減されます。軽減割合は、原則として4分の1となっています(老齢福祉年金受給者の場合は2分の1)。
※詳細は、各市区町村の窓口よりご確認ください。

▪申請方法
各市区町村の窓口へ社会福祉法人等利用者負担軽減対象確認申請書・収入状況等申告書・世帯全員の預貯金等の額を証明する書類等を提出。
審査が通ると、「軽減確認証」が交付されるため、対象となっているサービスを受ける際に、軽減確認証を提示。

また、災害により住宅等に著しい損害が出た場合や、生活が困窮している場合など、保険料の納付が困難な時、一定の基準を満たす第1号被保険者(65歳以上)は、介護保険料減免を受けることができます。
※詳細は、各市区町村の窓口よりご確認ください。

まとめ

今回は、「高額介護(予防)サービス費」についてお話させていただきましたが、いかがでしたか。
「高額介護(予防)サービス費」とは、利用した介護サービスが多く、個人や世帯の所得に応じて設定されている負担上限額を超えた場合、申請することで超過分が払い戻されるという制度です。
負担上限額を超えた場合は、各市町村より申請書が送られてくるため、自分で自己負担分を計算するなど手間が掛かることはありません。
興味のある方は、制度について各市町村の窓口に相談してみてはいかがでしょうか。

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