要介護者の中には、一般的な箸やスプーンの使用が難しい方がいます。
今回ご紹介する介護用スプーンは、自力で思うように食事ができない方でも使用しやすく、自分で食べる喜びを感じることができるため、食事介助をされる際にストレスや不安を感じていた方の 「自立心」につながると言われています。
もちろん、介護者側の負担軽減にもなるため、両者にとって介護用スプーンの使用はメリットが大きいといって良いでしょう。
要介護者が扱いやすい介護用スプーンとは
介護用スプーンの特徴と役割
要介護度によって変わりますが、要介護者の食事は、同居する介護者が与えている場合、箸やスプーンを持って自力で食事をする機会は減ります。
もし、少しでも自分でできれば、食べる楽しみや喜びを感じ、それは生きる活力につながります。
介護用スプーンは、主に持ち手が工夫されています。すくいやすく食べやすいように、口に入れる部分が柔らかい素材できているものもあり、唇に触れた時の感触が硬くなく、不快感を軽減してくれます。
介護者だけでなく、要介護者1人でも、介護用スプーンは扱いやすいと言われており、〝箸をうまく持てない〟〝握力が低下している〟〝食べ物を運ぶ途中で落とす〟といった方にもおすすめです。
皆さんの中には、介護施設でも介護用スプーンを利用してほしいと考えている方もいるのではないでしょうか。
しかし、介護施設に用意されているスプーンは通常のスプーンが多く、使用したい入所者は、個人的に購入することもあるようです。
介護施設では、自力での食事が困難な方は介護ヘルパーがついて食事の介助をしてくれます。つまり、基本的には介護用スプーンが必要とされておらず、施設には用意されていない場合もあるということです。
介護スプーン使用のメリット
介護スプーンを使用するメリットは大きく4つあります。
1.自立心の向上
介護者による過剰な介助は、要介護者の自立心の低下につながる恐れがあります。
要介護者自ら食事ができると、介護者への依存しにくくなり、自立心の向上が期待できます。
2.食事を楽しめる
自分で食事を摂る、つまり自分のペースで食事を楽しめるため、味や香りなどをより感じることができます。また、食べる順番を自分の意思で決めれば、主体性の向上にもつながります。
介護者の食事介助のペースが、要介護者のタイミングと合わない場合、要介護者にとって食事がストレスになる可能性があります。
3.誤嚥の予防
介護者が食事の介助を行う場合、介護者のペースに要介護者が合わせるため、誤嚥が起こりやすいとされています。
要介護者自ら食事をすると、食べ物を口に入れる・飲み込む動作を自分の好きなタイミングで行えるため、誤嚥予防に良いでしょう。
4.リハビリ
食事は、体の一部を動かさなければ摂ることができません。介護用スプーンの使用はリハビリの一環にもなり、物理的に日常動作の幅を広げることが期待できます。
要介護者が扱いやすい介護用スプーンを選ぶおすすめのポイント
素材
まずは介護スプーンの素材に注目しましょう。
要介護者が食事をする際にスプーンが食器に当たってしまった場合、金属製のスプーンであれば大きな音が鳴り、食器が割れてしまう可能性があります。
金属製や木製など、介護用スプーンの素材には様々な種類がありますが、介護度が高く、自由が利きにくい方には、シリコン製の介護用スプーンがおすすめです。
シリコン素材のスプーンであれば食器が割れる危険を防ぐことができます。
また、シリコン素材は、食べ物をすくいやすく口当たりが良いのも1つのポイントです。
形状
要介護度が高くなると、介護食はおかゆなどあまり噛まなくても食べられる、柔らかいものやペースト状のものが多くなります。
介護用スプーンに求められるのは、柔らかいものがすくいやすい形です。スプーンの先が平らになっているものであれば、柔らかい料理でも簡単にすくうことができます。
使用者に合わせる
最後に介護用スプーンを使用する方に合わせて選びましょう。
様々な介護用スプーンが販売されていますが、合う・合わないは人それぞれ異なります。介護者の立場から見て良いと思ったものでも、要介護者が使用すると気に入らない場合もありますし、逆もあるはずです。実際に使用する方が手に取って選ぶのが理想ですが、寝たきりの要介護者が店に赴くのは現実的ではありません。
ここでは、使用者目線の選ぶポイントをいくつかご紹介したいと思います。
▶首や柄の向き・形
介護用スプーンは、首や柄の向きを、使用する方の手の状態に合わせて形を変えられるものがあります。柄を曲げて使用すると手にフィットしやすくなり、落としにくくなりますし、首を曲げて使用すると口に運びやすくなります。
▶柄持ちやすさ
手の麻痺がある方や握力の低下がある方は、柄が細いスプーンを持とうとすると、上手に掴めず落としてしまう可能性があります。
このような場合、柄が太いものであれば、握力の弱い方でも握りやすく、力も入りやすいため、落としにくくなります。
スポンジが柄に付いているスプーンであれば、太さの調整をすることができますし、柄にベルトが付いているものであれば、スプーンを手に固定することもできます。また、柄の部分がゴム素材のものも滑りにくく落下予防に最適です。柄の部分が持ちやすい介護用スプーンは、不便さを感じさせません。
▶口の大きさに合うかどうか
口の周りに麻痺がある方、口を大きく開けない方は、開けられる口の大きさに合わせて介護用スプーンを選びましょう。
口の大きさよりも大きいサイズのスプーンでは食べにくいですし、一口の量も多くなりむせてしまう危険性もあります。
介護用スプーンのおすすめ人気ランキング4選
第4位
岡部洋食器製作所 口あたりやさしいスプーン小
価格 | 660円 |
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重さ | 13g |
寸法 | 幅19×長さ159mm |
商品の特徴
シリコンで作られているため、とても使用しやすいスプーンです。介護の必要な方の中でも、口があまり大きく開けられないという方の場合、こちらの商品であれば大きな口を開けなくてもしっかりと食べられます。煮沸消毒も可能なので、衛生面に心配のある方でも安心してご利用いただけます。
材質
スプーン:シリコンゴム
ハンドル・芯:ナイロン66
第3位
ハビナース すくいやすいスプーン
価格 | 660円 |
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重さ | 20g |
寸法 | 長さ164mm |
商品の特徴
見た目は普通のスプーンと同じなため、介護用スプーンを使用しているとは思えず、違和感がありません。しかし、すくう部分は口にいれやすく、大きめ・深めにできています。また、グリップは滑りにくく加工されているため、手が思うように動かないという方でも、こぼすことが少なく済むはずです。
材質
金属部:18-8ステンレス鋼
ハンドル部:ポリプロピレン
第2位
斎藤工業 木製丸形ハンドルスポンジ付スプーン小
価格 | 2,200円 |
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重さ | 41g |
寸法 | 長さ191mm |
商品の特徴
柄の部分に天然の木を使用した木製スプーンです。また、柄の部分には、握りやすいようにスポンジが付いているため、手を思うように動かすことができない方でも、簡単にスプーンを使用することができます。また、金属部分は形を変えることができるため、自分の食べやすい形に変えて使用することで、さらにスプーンが使いやすくなります。
材質
金属部分:XM-7ステンレス
柄部分:天然木
スポンジ部分:エチレン・プロピレンゴム(EPT)
第1位
岡部洋食器製作所 口あたりやさしいスプーンレギュラー
価格 | 715円 |
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重さ | 14g |
寸法 | 幅27×長さ160mm |
商品の特徴
シリコンゴムでできているため、口に入れても柔らかく口を傷つけません。
また、芯はしっかりとしているため、使いにくさを感じることもなく、食べることができます。耐熱温度は200度までなので、使用前後の煮沸消毒も問題なく行えます。カラーは三種類あるので、複数人で使用しても間違える心配がありません。
材質
スプーン:シリコンゴム
ハンドル・芯:ナイロン66
介護用スプーン使用の注意点
‣口の中、奥へ入れすぎない
介護者は、食事介助の際、口の奥へスプーンを入れ過ぎないようにしましょう。奥へ入れすぎてしまうと舌が口の中で動かせる範囲が狭くなり、その結果要介護者がむせてしまう危険性があります。
‣斜め上に向かって引き抜かない
スプーンを要介護者の口から引き抜く際は、水平に抜くよう心がけましょう。
下唇にスプーンの裏を当てて、軽く下へ圧力を与えます。上唇が丸まり食べ物を取り込めるので、そこで、スプーンを水平にゆっくり引き抜きましょう。
斜め上へ引き抜いてしまうと顎が自然と上がり、食事中の誤嚥を引き起こす可能性があり危険です。
‣スプーンに食べ物を載せすぎない
老化によって、唾液量が減り、飲み込む力も衰えるため、高齢者は、誤嚥を起こしやすくなります。さらに、周囲の助けがなければ日常生活を送ることが難しい要介護者であれば誤嚥を起こす危険性は更に高くなります。
誤嚥事故を防ぐためにも、介助の際の一口は、スプーンに載る半分程度を心がけてください。
また、食事介助の際は、何を食べるのか先に声掛けをし、一種類を集中して食べてしまうようであれば、他のものに目を向けさせてあげるように工夫しましょう。
まとめ
今回は、介護用スプーンについてご紹介させていただきましたが、いかがでしたか。
要介護者・介護者の両者が共に使用しやすいものを選ぶには、素材や形状など介護用スプーンの特徴を確認する必要があります。要介護者の食事は、本人にとっては楽しいものであり、介護者にとっては負担軽減につながるのが理想的です。
この点を踏まえた上で、一度介護用スプーンを試してみてはいかがでしょうか。