「お泊りデイサービス」とは、日頃から利用している「デイサービス(通所介護)」が終了した後、そのまま施設に宿泊することができるサービスのことです。介護保険の適用外ではありますが、待機者が多く希望の施設への入居が難しい状況だったり、予約がいっぱいで利用したい介護保険サービスが使えなかったりする場合、また、介護者側の負担軽減などを目的として利用されています。
今回は、「お泊りデイサービス」の特徴や利用方法、費用などについてご紹介させていただきます。
お泊りデイサービスとは
「お泊りデイサービス」は、「デイサービス(通所介護)」を利用する要介護者が、日中のサービスを受けた後、自宅に帰らず、夜間も引き続き施設に滞在し、そのまま宿泊できるサービスです。自宅から施設に通い、日帰りで受けられる介護サービスを「デイサービス(通所介護)」といいますが、「お泊りデイサービス」と組み合わせることで、デイサービスを利用した後もそのまま施設に滞在し、介護や支援を受けることができます。
「お泊りデイサービス」は、介護保険外のサービス
「お泊りデイサービス」は、介護保険のサービスに含まれる「デイサービス(通所介護)」で提供されますが、「お泊りデイサービス」というサービス自体は介護保険外(事業所の自主事業)で提供されます。介護保険対象外のため、費用は全額自己負担です。
「お泊りデイサービス」のように、施設に宿泊できるサービスは、主に、在宅介護を行っている家族(介護者)が、出張・冠婚葬祭・入院・急な体調不良など、何らかの理由により一時的に介護ができない状況になった時や、介護者のレスパイト(休息)目的として利用されています。
介護保険サービス内にも、「通所介護・訪問介護・泊まり」の3つのサービスを一つの事業所で提供する「小規模多機能型居宅介護」や、施設に一時的に入所して介護等のサービスを受ける「ショートステイ(短期入所生活介護)」など、活用できるものはいくつかあります。しかし、実際には、〝事業所の数が少ない〟〝サービスを利用することで併用できる介護保険サービスが限られてしまう〟〝数ヶ月先まで予約がとれない〟といったさまざまな理由で、介護保険サービスが思うように利用できないケースがほとんどです。特に、介護保険施設の一つである特別養護老人ホームは、待機者が非常に多く、施設になかなか入居できないという方も多くいます。
こういったさまざまな事情から、柔軟な対応が可能な「お泊りデイサービス」は、今も根強い需要がある介護保険適用外のサービスであるといえます。
職員体制・設備体制等について
「お泊りデイサービス」は、介護保険サービスのように、介護保険法によって定められる厳格な基準等がなく、以前までは、運営や設備、人員配置は、すべて事業所に一任されていました。介護保険適用外のサービスは、行政の目が届きにくく、事業所のモラルによってサービスの質が大きく左右されます。実際、多くのニーズに対応できるよう、サービス内容が柔軟に設定されている事業所がある一方で、一つの狭い部屋に何人もの利用者を雑魚寝させるという、劣悪な環境で運営する事業所があったり、利用者を長期間預けっぱなしにする家族がいたりするなど、さまざまな問題も指摘されていました。そこで、厚生労働省や各自治体などにより、施設やサービスの質向上に向けた取り組みが出てくるようになり、平成27年4月には、お泊りデイサービスを行う場合に、以下のようなことを施策として打ち出しています。
- 都道府県もしくは市町村への届出制にする
- 届出の内容は、介護サービス情報公表制度にもとづいて公表する
- 事故があった場合は、市町村や家族への連絡を義務づける など
また、平成27年4月30日には、「お泊りデイサービス」を提供するにあたっての、設備・人員・安全に関する基準や利用人数を示す、厚生労働省によるガイドラインが発表されました。
利用定員
- 9人以下かつ日中のデイサービスの定員の半分以下
職員体制
- 介護職員や看護師を常時1名以上配置
- 責任者は、実際に「お泊りデイサービス」を提供する職員から選ぶ など
設備体制
- 宿泊室は、個室または一室最大4名までの相部屋
- プライバシーを確保するため、個室でない場合は、パーテーション等で仕切る。ただし、カーテンによる仕切りは認められていない。
- 法令で規定されている消火設備やその他非常災害に必要な設備は確実に設置する。 など
一部の自治体では、連続宿泊の上限を原則30日までとしているところもある。
ただし、これらの運営基準はあくまでガイドラインであり、強制力はないため、「お泊りデイサービス」の基準を満たしていなくても、罰則規定がありません。事業所を決める際は、宿泊室や職員の人数、消火設備等の設置等を、サービスを利用する側が細かくチェックする必要があります。 また、東京都や大阪府などの一部の自治体では、厚生労働省が作成したガイドラインよりも、さらに具体的な運営基準を独自で設けているところもあります。
お泊りデイサービスの利用方法
「お泊りデイサービス」は、「デイサービス(通所介護)」とセットで提供されるサービスです。そのため、まずは、デイサービス利用の手続きを行います。
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「デイサービス(通所介護)」などの介護保険サービスを利用するには、要介護認定を受ける必要があります。まだ受けていないという方は、各市町村の窓口で、要介護認定を申請するようにしましょう。
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要介護度の判定をもらっている方、もらった方は、担当のケアマネジャーにお泊りデイサービスを利用したいことを相談し、サービス提供事業者を紹介してもらいます。もちろん、インターネットで事業所を検索したり、地域包括支援センターから情報を集めたりするなど、自分で探してみるのも良いでしょう。
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ケアマネジャーの助けを借りながら、複数のサービス提供事業者(施設)をピックアップします。見学や体験が可能であれば、積極的に利用してみるようにしましょう。特に「お泊りデイサービス」に関しては、運営基準が厳しく定められているわけではありません。事業所によって特徴が出る部分ですので、夜間帯の職員体制や宿泊室の人数、宿泊室や施設の設備等は特に確認しておくようにしましょう。
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利用したい施設が決まったら申し込みをします。
お泊りデイサービスの費用
最初にお伝えした通り、お泊りデイサービスは介護保険適用外であるため、サービスを利用する際にかかる費用は、全額自己負担となります。
また、料金も事業所独自で設定されます。利用料金の相場は、食事代込みで1泊3,000円〜5,000円程度となっており、全額自己負担のわりには比較的リーズナブルな価格設定のところもあります。
ただし、おむつ代や日常生活費、洗濯代など別途かかるものは、上記の料金にプラスされることになります。
お泊りデイサービスのメリット・デメリット
メリット
- 家族(介護者)の体調不良や急用による突然の利用も対応してもらいやすい。
- 家族(介護者)の負担軽減に繋がる。
- 待機者が多い、予約が取れないなどの理由で、介護保険サービスが思うように利用できないといった場合に、選択肢の一つとなる。
- 介護保険適用外のため、保険点数などを気にせずに利用することができる。
デメリット
- 運営基準に強制力がなく、事業所がガイドラインに従わなかった場合でも罰則がないため、事業所ごとでサービスの質に差がある。
- もともとデイサービスがメインであるため、事業者によっては、ショートステイのように宿泊専用の部屋を設けていないところもある。
- かかった費用は全額自己負担となる。
「お泊りデイサービス」は、ショートステイや小規模多機能型居宅介護の代わりとして利用することができるため、予約が埋まっていて介護保険サービスが利用できないといった場合の選択肢の一つとなります。
また、介護保険が適用されないため、費用は全額自己負担となりますが、保険点数を気にせずに利用することができるというのも、メリットとして捉えることができます。
ただし、ガイドラインの運営基準に強制力はないため、すべての施設に必ず個室が用意されているというわけではありません。もともと宿泊に対応していない施設であれば、食堂や機能訓練室が就寝する場所として使用されることもあり、プライバシーの確保が十分でない可能性も考えられます。 先ほどもお伝えしましたが、利用する事業所を決める際は、宿泊室やその他の設備等は、利用する側が十分に確認する必要があります。
お泊りデイサービス以外の介護保険外サービス
介護保険適用外のサービスには、介護保険サービスでは提供できない部分を補助する役割があります。介護保険サービスと介護保険外サービスを組み合わせて使うことにより、介護の質をより高めることができます。お泊りデイサービス以外の介護保険外サービスには、例として、以下のようなものがあります。
市町村が実施するサービス
- 配食サービス
お弁当や飲み物を利用者宅にお届けながら、利用者の安否確認を行います。 - 家事援助
料理、買い物、洗濯、掃除、ゴミ出しなど、主に家事の援助を行います。 - 寝具の手入れ
寝具の衛生管理が困難な方を対象に、布団の洗濯や乾燥、消毒等を行います。 - 訪問理美容
美容師や理容師が、外出が困難な利用者の自宅を訪問し、ヘアカット等を行います。 - 緊急通報システム
利用者の急病や事故等に備えるための通報システムを利用者に貸与します。
民間企業が実施するサービス
- 家事代行サービス
家事や介護を代行するサービスです。清掃会社や警備会社等、さまざまな民間企業が関わります。介護保険と比較すると料金は高めですが、選択肢の一つとして覚えておくと安心です。
※実施しているサービスの種類や内容は、各自治体や企業により異なります。
まとめ
今回は、「お泊りデイサービス」についてお話させていただきましたが、いかがでしたか。 高齢者の割合が増えてきていることなどからも、特別養護老人ホームなどへの入居や、ショートステイの予約はなかなか難しく、「お泊りデイサービス」の需要はどんどん高まっています。介護保険外サービスの特徴を理解し、事業所を決める際は、職員の人数や宿泊室等はしっかりチェックしておくようにしましょう。