認知症は進行すると、点滴や導尿の管を勝手に抜いたり、おむついじりをしたりと、周囲から『問題行動』に受け取られてしまう症状が出る可能性があります。
そのため、要介護者の家族がイメージする〝理想の介護〟というようにはなかなかいかず、対応に苦しみ、辛い思いをしている介護者もいるのではないでしょうか。
このような時、対策の1つとして一時的に使用されているのが「介護ミトン」です。「介護ミトン」は、必要やむを得ない場合のみの利用と限りはあるものの、在宅介護者や施設介護者の負担軽減だけでなく、時には自傷行為をしてしまう要介護者を怪我から守ってくれます。
今回は、「身体拘束」に当てはまるものは何なのか、また、「介護ミトン」の選び方や注意点について、ご紹介していきたいと思います。

目次

介護ミトンとは

問題行動とは

介護ミトンは、主に「問題行動」を防ぐことを目的としています。
では、具体的に問題行動とはどういった行動なのでしょうか。

・自分や他人を傷つける
認知症は脳の機能が低下し、感情を抑えることが難しくなります。
中でも、怒りの感情が出てきた際には、周囲を攻撃したり、自分を傷つけたりしてしまう可能性があります。 本人自体が感情の爆発に加減が出来るわけでは無いため、高齢で筋力が衰えているからといっても油断は禁物です。当たり所が悪ければ、周囲だけではなく、本人自身が大怪我をすることにもなりかねません。若い頃よりも免疫力が低下している高齢者が怪我をしてしまえば、そこから細菌が侵入し、最悪の場合、感染症にかかってしまうこともあります。

・点滴や導尿の管を抜く
要介護者の中には、日常的に点滴や導尿の管を入れている方がいます。
ただし、認知症などによって「なぜ、点滴や導尿の管の使用しているのか」、要介護者が理解できていないと、身体に何かが入っている違和感・痒み・痛みを要介護者が感じている場合、この管を勝手に抜いてしまうことがあります。
抜いてしまう原因となる違和感・痒み・痛みを解決することができれば、問題はありませんが、点滴や導尿の管を使い続けている以上、緩和する工夫はできても、これらの原因をすべて解決するのは難しいといえます。

・おむつを外す
おむつを使用している要介護者の中には、おむつが汚れることで生じる不快感から、自分でおむつを外してしまう方がいます。
外したことによりパジャマや寝具が汚れれば、オムツに付いていた尿や便が皮膚につき、湿疹や床ずれの原因をつくることになります。
また、認知症患者にみられることの多い〝弄便〟という症状がある場合、要介護者が便を便と認識できていない可能性があります。
実際には、おむつの中に手を入れて、便を壁に塗りつけてしまったり、タンスや布団の中に隠してしまったりといった便をいじる行為がみられます。万が一その手が口や目に入った場合、感染症などを引き起こす可能性があります。

介護ミトンとは

問題行動を起こす要介護者を在宅で介護する際、介護者となる家族からすれば、24時間体制で付き添っていたいものですが、それぞれに仕事・育児・家事と事情があるため、なかなか難しいのが現状です。
また、問題行動自体を注意すれば治まるという訳ではありません。何度も注意をすると、認知機能が低下している方は、認知症の症状がさらに悪化してしまう可能性があります。
その結果、認知症の症状悪化をストレスに感じた介護者である家族が、暴力行為を働いたり、必要以上に身体拘束を行ったりと、〝高齢者虐待〟につながる可能性も考えられます。
介護ミトンは、名前の通り手袋のような形をしています。手に付けることで、通常よりも手が自由に動かしにくくなり、要介護者の多くの問題行動を防ぐのに適しています。問題行動が一時的にでも抑えることができれば、介護者側の負担を少しでも減らすことができるでしょう。

身体拘束とは

問題行動を防ぐ方法を調べていく中で、「身体拘束」という言葉を一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。文字通り、身体を縛って動けないようにすると考える方も多いと思いますが、その他にも身体拘束にあたる行為はいくつかあります。
具体的には、『部屋から出て徘徊しないように部屋の外側から鍵をかける行為』、『ベッドに柵を付けて自力でベッドから降りられないようにする行為』、『向精神薬を飲ませて動けなくする行為』が挙げられます。
「身体拘束」は、身体的弊害・精神的弊害・社会的弊害をもたらすと言われており、在宅及び施設介護者は、これらの弊害を認識した上で、介護に取り組む必要があります。
今回ご紹介している介護ミトンに関しても、身体拘束とみなされる場合もあるようですが、介護者の目線で見ると要介護者の事を考えて、安全に過ごすための対策とも捉えることができます。

身体拘束による行動の制限によって、問題解決したと勘違いしてはいないか、身体拘束が習慣化していないか、気を付ける必要があります。

しかし、身体拘束が必要やむを得ない場合もあります。
例えば、おむつを外す行為は、おむつをこまめに交換することで解決できないかなど、原因を見つけて対策をとることが一番と言えますが、毎回タイミング良くはいかないものです。
介護者が無理に拘束をすれば、要介護者は自分の思うようにできないストレスを感じ、不安・怒りなどによって、今までよりも拒否や抵抗が更に強くなる可能性も考えられます。
厚生労働省では、下記のように身体拘束に対する「緊急やむを得ない場合」、3つの要件を示しています。
(身体拘束に対する考え方 厚生労働省より)

【切迫性】
利用者本人または他の利用者の生命または身体が危険にさらされる可能性が著しく高い場合。

【非代替性】
身体拘束以外に代替する介護方法がないこと。

【一時性】
身体拘束は一時的なものであること。

この3つの要件を満たしている場合に、介護施設では身体拘束をすることが容認されています。自宅での介護の際にもこれらを目安とし、もし、身体拘束の必要性を感じた場合は、一度、主治医に相談してみてください。

介護ミトンを選ぶおすすめのポイント

通気性

the abstract background texture of synthetic fabric

介護ミトンは肌に直接触れます。装着中、汗で蒸れてしまう可能性もあるため、できるだけ通気性の良いものを選びましょう。素材選びをこだわることで、使用感はもちろん、肌への負担も少なくなります。特にメッシュ素材は夏場におすすめです。
また、綿は吸汗性が良く、ポリエステルや混紡の中には、吸湿速乾機能や抗菌防臭加工が施されているものもあります。
しかし、メッシュ素材などの薄手の生地は通気性が良い反面、破れ・擦り傷のリスクがあります。手の動きが多い場合、手の甲だけがメッシュ素材になっているものを選ぶなど、少しでも破れ・擦り傷のリスクを減らす工夫をしましょう。
肌に直接触れる介護ミトンは、洗濯をこまめにして、清潔に使用することが大切です。商品によっては手洗いのみのものや、乾燥に時間のかかるものもあるため、洗濯方法を確認しておくのもポイントです。

固定方法

介護ミトンは、要介護者が勝手に外さないようしっかりと固定ができるようになっています。この固定方法にも種類があるため、ここで確認しておきましょう。

【マジックテープ・スナップボタン・バックル】
これらは比較的、扱いが簡単です。着脱時に時間をかけなくて済むため、介護ミトンの着脱に抵抗を感じている要介護者でも、ストレスをあまり感じません。
しかし、要介護者に外されないよう、当て布を付ける手間があったり、ボタンの寿命が短かったりといったマイナス面もあります。
要介護者の手指があまり動かない場合におすすめです。

【紐】
しっかりと結んで固定をするため、着脱に時間がかかってしまいますが、その分、要介護者が外す可能性も低く安心です。
要介護者の手指の動きが多い場合には、簡単に外れないように固定することのできるこのタイプが良いでしょう。
ただし、固定する際に紐をきつく締めすぎないよう注意してください。

目的に合わせた形状

・拘縮予防
長時間介護ミトンを使用していると、指が動かないため手がこわばってしまう、拘縮してしまう可能性があります。拘縮を防ぐためには、ミトンの中で手を動かすことのできるもの、握ることのできるものがおすすめです。
ポケットタイプは、ミトンの内部がグリップなどで仕切られており、親指とその他の指を分けて入れられるものと、すべての指を分けて入れることのできるものがあります。自然な形で手を収めることができるため、ミトンを使用している状態でも簡単に手を握ることができます。もちろんミトンを使用している状態で何かを掴むということはできませんが、ミトン内で指を動かすだけでも拘縮の予防になります。
また、このタイプはミトンの中にクッションが入っており、それを握ることが拘縮予防になります。クッションをつかんでいれば、他のものを掴みたいという衝動を減らすことにも繋がります。

・測定器の使用
オープンタイプは、指先部分を開けることができるため、ミトンを外さずに指先を出すことができます。パルスオキシメーターなどの測定器を使用する際や、指先ケアをする必要のある方の使用におすすめです。
さらに、ファスナーの開閉がスムーズに行えるものであれば、たとえ要介護者が就寝中だったとしても、起こす危険性もありません。

点滴の管の抜き取り防止

普段から点滴をしている要介護者の中には、痛みや違和感によって、点滴の管を抜いてしまうという方がいます。介護者が目を離している間に点滴の管が抜けていたということのないようにするためには、定番のミトンタイプを選ぶのがおすすめです。
ミトンタイプは、指を曲げるなどの細かい動きができないため、点滴の管や導尿管の抜き取りだけではなく、肌の掻きむしりも防ぐことができます。
ただし、ミトンの装着中は、手のひらを開いた状態でいるため、時々手を動かす時間を作ってあげるようにしましょう。

怪我防止

手を壁やテーブル、ベッドの端などにぶつけてしまい、怪我をする可能性のある要介護者の場合、クッションタイプを使用しましょう。
ミトンの中には厚いクッションが入っているため、軽い衝撃であれば怪我を防ぐことができます。
ただし、指先部分が蒸れやすくなるため、出来れば通気性が良いものを選びましょう。

サイズ

介護ミトンは男女共用で使用できるものが多くあります。手の大きさは個人差があるため、ミトンのサイズはしっかりと確認をしておきましょう。購入前に、手のサイズを測っておくことが重要です。
ミトンは、小さすぎるものでは手や指の動きが悪くなってしまい、手指の機能低下に繋がります。反対に、大きすぎるものでは簡単に外れてしまいます。窮屈になり過ぎず、そして、ぶかぶかになり過ぎない程度、自分の手よりも少しだけ大きいサイズを選ぶようにしてください。
ちなみに、クッションタイプの介護ミトンの場合、中にクッションが入っており見た目は大きく感じても、意外と中は狭くなっている可能性があるため、注意しましょう。
また、手首の固定がしっかりとしているものであれば、多少大きくても簡単に外れにくくなるため、固定部分についても確認しておきましょう。

介護ミトンのおすすめ人気ランキング10選

第10位 EPWorld 介護ミトン

価格 3,490円
サイズ 33cmx16cm
重量 150g

商品の特徴
メッシュタイプのミトンになっているため、通気性がとても良く蒸れにくい商品です。また、手のひら部分に最高級の皮革を使用しており、柔らかいながらも堅固な作りになっています。青のソフトタイプとピンクのハードタイプ2種類が販売されているため、使用目的に合わせて選ぶことが可能なので、ぜひ一度試してみてはいかがでしょうか。

第9位 YOHO 介護の天使

価格 4,955円
サイズ 32cm×19cm
重量 175g

商品の特徴
通気性の良いメッシュ素材のミトンで、蒸れやすさを軽減しており、夏場でも使用することができます。また、常に清潔な状態で使用をするためにも、洗濯機で洗うことができる商品です。中にクッション性の高いビーズを
入れることで、速乾性も感じられます。また、裏生地も柔らかく手をやさしく守ってくれます。

第8位 ウインセス 介護ミトン まもるくんガロ

価格 5,700円
サイズ S(約31cm/約12.5cm)
L(約34cm/約14.5cm)
重量 200g

商品の特徴
「患者に優しく、看護師に使いやすい」を目指し、香川県内の看護師の要望を聞いて作られているため、多数支持をされている商品となります。
手首を固定する部分がミトンの内側にあります。また、ミトンに付いているファスナーも内側に入るため、自分で外すことが難しくしっかりとミトンとしての役割を果たしてくれます。

第7位 竹虎 セーフミトン®Ⅲ041056

価格 6,050円
サイズ 適応手首廻り13~20㎝
適応手の長さ14~19㎝
重量 290g

商品の特徴
親指部分と小指部分に間仕切りがあり、それによってミトンを付けた際に、手が回転しないように防ぐことができます。パッドが二層構造のため、物を掴みにくいですが、手の甲部分にはメッシュ素材を使用することで蒸れ
にくく、手の状態を確認することもできます。自力で外すことが難しいため、勝手に外す心配はありません。

第6位 World Bridge 介護ミトン

価格 1,250円
サイズ 横幅:21.20cm、奥行:27.00cm
重量 130g

商品の特徴
手の甲部分がメッシュ素材になっている、通気性の高い介護ミトンです。
固定方法はマジックテープで止めた上から、紐で縛るという方法になります。紐はベッドのパイプ部分に結んでおくこともできます。また、介護ミトンの中にはプラスチックのパッドが内蔵されており、指の自由度の低い商品となります。

第5位 fiveAstar 介護ミトンA318

価格 1,280円
サイズ 27cm×19cm
(手首14-20cm、手のひら14-18cm)
紐の長さ(85cm×2)
重量 141g

商品の特徴
24時間付きっきりで介護をするのは難しく、目を離したすきに何かあってからではとつい無理をしてしまう方におすすめの、介護ミトンになります。マジックテープで手首部分を固定し、その後紐をしっかりと結ぶことで、外れにくくなります。使用中紐がほどけてしまう場合には、縛り方を変えることでさらにしっかりと固定されます。

第4位 竹虎 フドーてぶくろNo.5

価格 7,700円
サイズ M手首12~18㎝、手のひら14~18㎝
重量 299g

商品の特徴
付け外しの際にコツがいる、アイデアホックを採用しており、暴れてうっかりミトンが外れてしまったり、目を離した隙に勝手に取られていたりという心配のいらないアイテムです。中で多少手指を動かすことができるように、余裕のある作りとなっており、さらに通気性のあるメッシュ素材で蒸れにくくしてくれます。

第3位 竹虎 フドーてぶくろNo.1

価格 6,050円
サイズ M手首12~18㎝、手のひら14~18㎝
重量 209g

商品の特徴
こちらも第4位でご紹介したミトンと同様、アイデアホックを採用しており、ベルトのようになっているため、その人の手首に合わせて長さを調整することができます。両面に綿を使用しており、肌に触れている時の違和感
や不快感はほとんどないはずです。カラーも3色あるため好きな色に合わせて選ぶことも可能です。

第2位 竹虎 フドーてぶくろNo.6

価格 5,500円
サイズ M手首12~18㎝、手のひら14~18㎝
重量 281g

商品の特徴
アイデアホック付きのベルトカバーを使用することで、使用者では外れにくいだけではなく、取り外すこともできるようになります。両面が綿素材でできており、洗濯機を使用することも可能なため、蒸れて汗などで汚れてしまった場合でも、洗うことで繰り返し清潔に使用することができます。サイズは2種類あり、手の大きさに合わせて選びましょう。

第1位 日本エンゼル ソフトにぎっ手ルバーカー ルミドSIMD02

価格 7,315円
サイズ 32cm×18cm
手首周り対応サイズ:14cm~22cm
重量 349g

商品の特徴
ポリエステル素材で作られている介護ミトンで、表面はメッシュ生地を使用し、生地の間にはポリエチレンビーズを使用することで、ミトン装着時手が蒸れてしまうことを防いでくれます。洗濯はもちろん、脱水・乾燥まで
行うことができるため、替えのミトンが少なくてもすぐにきれいなミトンを使用することができます。

介護ミトンの注意点

安全確保の目的で使用する

介護ミトンは、要介護者・周囲の方の安全を確保する目的で使用しますが、要介護者の自由を押さえつけるために使用するという問題が、起こる可能性があります。もちろん、付き添って様子を見ていることができない状況など、やむを得ない場合もあります。
しかし、どのような事情であれ、日常的に付けたままではなく、本人や周囲の状況を確認しながら必要に応じて使用することが大切です。今までの問題行動を防ぎつつ、要介護者の負担にもならないように心がけましょう。
介護ミトンの利用が初めてで不安な方は、主治医に相談してから利用するようにしてください。

こまめなケアを意識する

介護ミトンは手を思うように動かすことができなくなるため、その分ケアも大切になります。特に、肌のケア・手の拘縮予防は欠かさないようにしましょう。

【肌のケア】
ミトンを装着している手は汗をかきやすいため、ミトン内は汚れやすく蒸れやすい状態になっています。そのまま使用を続けていると、あせも・かぶれなどの肌のトラブルを引き起す可能性があります。高齢者の場合は特に肌が弱く、少しの刺激にも敏感であるため、定期的に洗濯を行い、清潔な介護ミトンを使用するようにしましょう。洗い替えとして複数枚介護ミトンを購入しておくのもおすすめです。
また、介護ミトンは始終つけているものではありません。定期的に外し、手や指など肌の状態を確認・清潔にすることも忘れないようにしましょう。

【手の拘縮予防】
介護ミトンを長時間使用した場合、手を自由に動かすことができなくなります。手が拘縮すれば、手を開く・閉じるなどの機能が低下してしまう可能性があります。拘縮を防ぐためには、選ぶポイントでもお伝えしたように、介護ミトンの種類が重要となりますが、介護ミトンの種類だけに頼るだけではなく、肌ケアと同様、定期的に介護ミトンを外し、手や指を動かすように心がけましょう。

まとめ

今回は、要介護者におすすめの介護ミトンについてご紹介させていただきましたが、いかがでしたか。

要介護者の中には、問題行動を起こしてしまう方もいます。しかし、決して嫌がらせなどの気持ちでやっているわけではありません。
頭では理解していても、病気であると割り切って認めることができない介護者も多いのではないでしょうか。特に在宅介護を選び介護者となった家族は、介護をしている中で辛く、悲しい気持ちと葛藤していることも多々あると思います。
「身体拘束」をせずに行うケアが一番であることは、誰もがわかっていることですが、要介護者、そして介護者を守るためにも、やむを得ない状況であった場合、介護ミトンを使用するのも選択肢の一つです。誰もが安易に使用して良いものではありませんが、「身体拘束」の問題もあるため、一度、主治医に相談してから、使用を考えてみてはいかがでしょうか。

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