介護を必要とせず、自立した生活を送ることができる高齢者を対象とした「健康有料老人ホーム」。設備が豪華でレクリエーション等も充実しており、趣味活動や娯楽を自由に楽しみながら、心身共に健康的な生活を送ることができます。
今回は、健康型有料老人ホームの特徴だけでなく、設備や費用などについてご説明したいと思います。

目次

健康型有料老人ホームの特徴

有料老人ホームは、一般的に、「介護付き」・「住宅型」・「健康型」の3つに分類されています。そのうちの一つである「健康型有料老人ホーム」は、基本的に、介護を必要としない健康な高齢者や、要支援状態の高齢者を入居対象とした施設です。
健康型有料老人ホームの中には、介護付き有料老人ホームが併設されているところもありますが、「健康型」は、あくまで、高齢者の方がシニアライフを楽しく健やかに過ごすことを目的としたサービス・設備・人員配置となっているため、要介護度の重度化や認知症の発症、日常的な医療ケアが必要となった場合は、退去を求められることがあります。高齢者施設の入居を検討する際は、将来介護が必要になった場合にどのようするか、考えておくようにしましょう。

健康型有料老人ホームの特徴
居室 一人床面積13㎡以上(全室個室)
設備 居室には、トイレ、浴室、キッチン(※施設による)
食堂、リビング、ラウンジなどは共有スペース。
また、理美容室、レストラン、売店などが併設されており、プール、
天然温泉、ミニシアター、図書館、カラオケ、麻雀などの娯楽設備
が充実。
人員配置 施設長(管理者)1名は必ず配置 ※その他職員は必要数
設備スタッフ 施設長、介護職員、看護職員、機能訓練、
生活相談員、機能訓練指導員、栄養士、調理員など

提供されるサービスは、食事の提供や家事支援・安否確認などの日常的なサポート、緊急時の対応が中心となります。施設のスタッフは、施設長(1名)の配置が必須であり、その他の職員はサービスの提供に支障が出ない程度の配置数となっています。
サービスは主に、健康的な高齢者が対象となっているため、介護職員を配置していない場合も多く、施設のスタッフによる介護サービスは提供されておりません。必要であれば、個人で契約した外部のサービスを利用し、体調不良や軽度の要介護状態に対応してもらいます。
特徴としては、利便性の高い都心部や閑静な高級住宅地、住環境の良いリゾート地など、立地条件の良い場所に作られることが多いことや、高級ホテルのような居室や共有スペース、食事の内容、施設内の設備、レクリエーションやイベントが充実していることなどがあげられます。

例えば、
・施設内に有名シェフを招いて料理の提供。
・理美容室、医務室、リハビリ専用設備、フィットネスジム、レストラン、売店などを併設。
・プール、天然温泉、ミニシアター、図書館、カラオケ、麻雀といった充実した娯楽設備。
・専門の先生を招いてカルチャー教室の開催。
・外出イベントや季節ごとのイベント開催。
などがあります。

更に、健康型有料老人ホームは、1日の生活スケジュールが特に決められていないため、自由に外出ができ、家事などの日常生活上のサポートを受けながら、すべての時間を自分の趣味と娯楽に使えることができます。

健康型有料老人ホームの入居条件

『健康型有料老人ホームの特徴』でもお伝えしたとおり、健康型有料老人ホームは、介護を必要とせず、自立した生活を送ることができる「自立」や「要支援」の健康な高齢者の方が主な入居対象となっている施設になります。そのため、要介護度が高くなったり、認知症を発症したりすると、原則退去が求められます。施設の設備や人員配置、提供されるサービスは介護を前提としていません。
仮に、退去を求められなかったとしても、外部の介護サービスだけでは、対応が難しい介護が必要となった場合は、介護付き有料老人ホームなどへの引っ越しを考えましょう。
年齢は、概ね60歳以上を入居基準としている施設が多い傾向にあります。その他、「感染症の有無」や「資産・収入」、「身元引受人がいる」など、施設独自の基準を設けているところもあります。

健康型有料老人ホームの費用

有料老人ホームは、株式会社や有限会社、医療法人などの民間企業によって運営されている「民間施設」のため、国や地方自治体によって運営されている「公的施設」と比較しても、全体的に費用は高めです。
特に「健康型」の場合は、元気なうちから入居するため、利用年数が長くなる傾向にあることや、施設の快適さ・設備の充実度を求められることから、立地場所や敷地面積の広さ、共用設備等にお金をかけている施設が多く、入居にかかる費用(入居一時金や月額費用)はかなり高額です。
※施設によって料金設定に多少の差はあります。
平成25年度の老人保健健康増進等事業「有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅に関する実態調査研究事業 結果概要」によると、健康型有料老人ホームは全国に16ヵ所ほどしかなく、2013年(平成25年)の厚生労働省によるデータでは、全国にある有料老人ホームのうち、「健康型」が占める割合は約1%以下という結果になっています。施設数だけでみると入居者の倍率が高いように感じますが、実際には、高級志向をうたった施設が多く、料金が高額設定のため、富裕層や超富裕層など、入居する人は限られているのが現状です。費用面がクリアできれば、入居しやすい有料老人ホームといえるでしょう。

入居一時金の償却期間

健康型有料老人ホームに入居するにあたり、「入居一時金」と「月額費用」が必要になります。
「入居一時金」は、有料老人ホームならではのシステムで、入居する際にある程度まとまった金額を支払うことで、入居する施設を終身利用する権利を得ることを目的としています。入居一時金は、国の法律で金額が定められているわけではないため、施設によって金額に大きく差があり、0円のところもあれば、数千万円かかるところもありますし、数億円かかる高級有料老人ホームもあります。
また、月額費用とは、その名の通り、毎月支払う料金のことで、家賃や運営費、水道光熱費、食費、それ以外に
かかる生活費などが含まれています。入居一時金が0円のところでは、入居一時金を月割りで支払うことになるため、この月額費用に料金が上乗せされ、毎月の支払額が高くなります。

入居一時金は、入居後に一部が償却されます。これを、「初期償却」といいます。残りの入居一時金は、入居中に少しずつ償却されますが、施設側が定めた「償却期間」が過ぎると、入居一時金はすべて償却されたことになり、0円の状態になります。「償却期間」は、施設が想定する入居期間のことで、この期間内に支払った入居一時金はすべて償却されるように設定されています。
償却期間も施設によりさまざまですが、15~20年と長い期間で設定されていることもあります。

高額な入居一時金が必要となる老人ホームも多い中、入居一時金に「返還金制度」を設けている施設もあります。「返還金制度」とは、入居中、万が一入居者が死亡、あるいは退去となった場合に、退去が償却期間内であれば、まだ償却されていない分の入居一時金が返ってくるというシステムです。この制度により、何らかの理由で早期に退去しなければならなくなった場合でも、支払った入居一時金すべてが無駄になるということではないため、安心して費用を払うことができます。

一定の期間内であればクーリングオフが可能

入居一時金が高額であればあるほど、入居してみてイメージと違っていたらどうしようと不安になる方もいるのではないでしょうか。実際、施設の職員や入居者の雰囲気、環境、食事の内容や味付け、介助の様子、自由時間の様子など、入居してみないと分からないことはたくさんあります。
また、入居してすぐに病気を発症し、重度の医療措置が必要となった場合や、長期入院が必要となった場合は、やむを得ず退去になることもあります。
先ほどもご説明しましたが、「初期償却」は、入居後に入居一時金から差し引かれ、残りの金額は入居期間に応じて少しずつ償却されていく仕組み(経年償却)となっています。一回につき償却される金額の割合(償却率)は、償却期間と同様、特に法律によって定められているわけではないため、施設ごとに大きく異なります。初期償却率に関しては、20~40%に設定している施設が多く、中には、それ以上の初期償却率で設定しているところもあります。

そこで、「初期償却」と大きく関わりのある「クーリングオフ」制度について、お話したいと思います。
「クーリングオフ」とは、契約後一定の期間内であれば、無条件で契約の解除ができる法制度のことです。有料老人ホームなどでは、施設に入居後、退去を希望する、あるいは退去が求められた場合に、契約から90日内であれば、入居一時金が〝ほぼ全額〟返金される、いわゆる「90日ルール」が適用されることになっています。このクーリングオフ制度は、各都道府県によって規定されており、90日ルールを設けていない事業者(施設)に対しては、都道府県が、適切かつ実効性のある指導等を行わなければならないことになっています。
※〝ほぼ全額〟というのは、居住した期間分の家賃と、今まで住んでいた居室の原状回復費(クリーニング代) 分は返還しない施設もあるため。

契約時は「短期解約特例制度」などの名目で表記されているため、契約内容が分かりにくく、入居して退去となった場合に後々トラブルが発生してしまうケースや、そもそも「90日ルール」自体を知らず、損をしてしまったという方も多くいます。契約時は、契約書類や短期解約特例制度の内容等を丁寧に確認し、疑問点があれば、どんどん尋ねてくことが大切です。

施設の見極めは入居後90日以内

退去を申し出た場合に入居一時金のほぼ全額が返金されるクーリングオフ制度は、「入居後90日以内」に退去を申し出た場合のみの適用となります。そのため、期限を超えてしまうと「初期償却」の分は、入居一時金から償却されます。
もちろん、入居一時金には「返還金制度」が設けられているため、入居から90日を過ぎて退去を申し出た場合でも、償却していない分の入居一時金は返金されるようになっています。
しかし、期限である90日以内に退去した場合と、90日を過ぎてから退去した場合では戻ってくる金額に大きな差があるため、もし入居後にサービスや施設の雰囲気等に不満があったり、他の入居者と馴染めなかったりする場合は、入居から90日までには施設を見極め、退去したいと判断した場合はすぐに退去を申し出るようにしましょう。

健康型有料老人ホームのメリット・デメリット

メリット

  • 設備やレクリエーションなどが充実している。
  • 自由度が高く、自分のペースで生活することができる。
  • 外部のサービスを利用することで、体調の異変や、軽度の要介護状態に対応することが可能。
  • 一人暮らしをしている高齢者の不安解消に繋がる。
  • 他の入居者と交流することもでき、同年代の仲間をつくるきっかけになる。

デメリット

  • サービスや設備が充実している分、費用が割高。
  • 日常的に介護が必要となった場合は、基本的に退去となる。

健康型有料老人ホームは、「介護付き」や「住宅型」のように、起床時間や就寝時間、食事の時間、入浴の時間など、1日のスケジュールが決められていないことや、生活支援サービスにより、掃除、洗濯といった家事のほとんどを任せられること、娯楽設備が充実していること、外出が自由にできることなどから、自分のペースで生活することができるというメリットがあります。中には、帰宅時間を気にしなくて済む、24時間出入り可能な施設もあります。
また、面会は時間や日にちが決められている施設も多い中、健康型は、各自の都合で自由に面会することができます。施設内に家族が泊まれるゲストルームを設けている施設も多く、家族にとっても安心の設備となっています。
自分の身体の状況に合わせて、外部の介護サービスや医療サービスを利用することができるため、健康状態の管理や、軽度の要支援状態であれば対応可能です。どのような1日を過ごすかは個人の自由ですが、実際には、サークルやイベント、レクリエーションに参加し、入居者同士で交流を深めている方も多いと言えます。
しかし、居心地や使い心地が良く、シニアライフを十分に楽しむ設備やイベントが整っている分、費用がかなり割高な施設が多いことや、介護サービスが提供されないことから、日常的な介護が必要となってしまった場合は、退去となるケースが多いというデメリットもあります。

強制退去となる場合

老人ホームを利用していると、施設側から退去を求められることがあります。健康型有料老人ホームの場合、強制退去となるのは、主に以下のようなケースの時です。

・手厚い介護が必要
・継続的な医療措置が必要
・長期入院が必要となった場合

主に、健康な高齢者を対象としている健康型有料老人ホームでは、重度の介護や医療に関する設備や体制が整っておらず、対応することは困難なため、原則退去となります。
「長期入院」とは、一般的に「3ヶ月以上」とされていますが、入院中は施設の居室が空いている状態になることや、施設に復帰するのが困難と判断されるため、退去を求められることが多い傾向にあります。

▶料金の支払いを滞納した場合
健康型有料老人ホームでは、施設独自の入居基準を設けているところもあり、一定の収入や資産があるか確認されるところも多いですが、入居後に経済状況が悪化したなどで各種費用が払えなくなってしまった場合は、 退去を求められます。

▶入居者とのトラブルが多い場合
認知症の悪化等が原因で、他の入居者とトラブルが多発している場合や、人とのかかわりを拒否している場合に、集団生活を送ることが困難とみなされ、退去を命じられる場合があります

施設の都合で退去を求められることも

施設側の都合で退去が求められることもあります。
例えば、人員不足による業務縮小や、事業主体である法人の倒産などで運営が悪化し、施設を閉鎖することになった場合です。
一般的には、契約終了の30日前までに文書で通知されることが多く、その際に、関連施設等を紹介され、転居を促されることもあります。

退去時は「原状回復費用」が必要になる

退去時は、自ら申し出た退去なのか強制退去なのかは関係なく、退去時に「原状回復費用」を支払わなければならないことがあります。「原状回復費用」とは、入居していた部屋をもとの状態に戻すためにかかる費用のことです。壁、床、畳の色褪せ・汚れなど、経年劣化が原因によるものは施設側の負担となりますが、入居者の故意・過失などによって生じた破損等は入居者が負担することになります。また、個人で設置したもの(ドアや棚など)がある場合は、撤去費用がかかります。
入居者にとっては思いがけない出費となることも多く、「原状回復費用」によるトラブルのケースも少なくないため、施設への入居を考えている方は、あらかじめ理解しておくようにしましょう。

まとめ

今回は健康型有料老人ホームについてご紹介させていただきました。
有料老人ホームでも、特に設備やレクリエーションが充実している「健康型」は、趣味や娯楽、食事等を自由に楽しめるだけでなく、イベントなどを通し、同年代の方との交流を深めたり、健康の維持や介護予防を図ったりすることもできる、「自立」や「要支援」の高齢者向け施設となっています。
ただ、設備が豪華な分、費用も高額な施設が多く、富裕層や超富裕層の高齢者が入居する傾向にあります。また、どのような入居者が集まっているかで施設の雰囲気も大きく変わってくるため、経済的状況はもちろん、 一度見学をして施設の雰囲気を知ってから施設を決めるのも良いかもしれません。

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