2024年度に廃止されることが決まっている「介護療養型医療施設」の転換先として、2018年4月創設された「介護医療院」。急性期の治療が終わり、病状は安定しているものの、要介護者で在宅での介護が困難という場合に選択される施設で、医療・介護・住まい・看取りといった複数の機能を兼ね備えています。
そこで今回は、「介護療養型医療施設」の代わりとなる「介護医療院」の入所条件や種類、提供するサービスなどについて詳しくご紹介していきたいと思います。
ぜひ、参考にしてみてください。

目次

介護医療院の特徴

介護医療院とは

「介護医療院」は、長期にわたり療養が必要な要介護者に対し、施設サービス計画に基づいて、「日常的な医学管理」や「看取り・ターミナルケア」などを一体的に提供する施設です。法律条文上では削除されている「介護療養型医療施設(療養病床)」の転換先として、2018年度に創設されました。現在、「介護療養型医療施設(療養病床)」から「介護医療院」への移行中で、期間は2024年3月末まで設けられています。
廃止される「介護療養型医療施設(療養病床)」は、急性期の治療が終わり、ある程度病状が安定したものの、比較的重度の要介護者で、在宅での介護が困難な人を対象に介護を行う施設として位置付けられていました。

介護療養型医療施設(療養病床)の転換先として新設された「介護医療院」は、長期にわたり療養が必要な要介護者を対象に、「胃ろう」や「経鼻栄養」、「酸素吸入」、「痰の吸引」といった医療サービスを提供する他、食事や入浴等の介護、日常生活上の世話、生活機能を維持・改善を図るためのリハビリテーション、そしてターミナルケアを実施するなど、「医療」と「介護」の複合的ニーズに対応しています。

介護医療院は、利用対象者により「Ⅰ型療養床」と「Ⅱ型療養床」の2つに分類されています。

利用対象者
Ⅰ型療養病床 重篤な身体疾患あるいは身体合併症を有する認知症高齢者等
Ⅱ型療養病床 Ⅰ型と比べて容態が比較的安定している者

「Ⅰ型療養病床」は介護療養型施設相当のサービスを、「Ⅱ型療養病床」は介護老人保健施設以上のサービスを目指すため、「Ⅰ型」と「Ⅱ型」では、特徴が異なります。

 
介護医療院(Ⅰ型・Ⅱ型)の特徴
療養室 ・面積基準は老人保健施設相当以上(8.0m²以上)
・ナースコールがある
※多床室な場合は、家具やパーテーションによる間仕切りが必要
※Ⅰ型の療養室の定員は、4人以下
主な施設設備 診察室、処置室、機能訓練室、レクリエーションルーム、談話室、
エックス線装置、臨床検査設備など。
人員基準
(最低基準)
【介護療養病床相当(Ⅰ型)の場合】
医師:入所者48人に対し1人(施設に3人以上配置)
看護職員:入所者6人に対し1人
介護職員:入所者5人に対し1人
薬剤師:入所者150人に対し1人
栄養士:入所定員が100以上の場合1人以上
介護支援専門員:入所者100人に対し1人(施設に1名以上)

【老健施設相当以上(Ⅱ型)の場合】
医師:入所者100人に対し1人(施設に1人以上配置)
看護職員:入所者6人に対し1人
介護職員:入所者6人に対し1人
薬剤師:入所者300人に対し1人
栄養士:入所定員が100以上の場合1人以上
介護支援専門員:入所者100人に対し1人(施設に1名以上)

「理学療法士・作業療法士・言語聴覚」、「診療放射線技師」、
「調理員・事務員等」は、Ⅰ型・Ⅱ型共に実情に応じた適当数。
提供されるサービス ・医学的管理のもと行われる介護
・看護
・療養上の管理
・日常生活上の世話
・機能訓練その他必要な医療
看取り 体制が整っていれば、対応可能
認知症 対応可能

介護医療院の療養室は、従来の療養病床で6.4㎡/床だったのに対し、介護医療院では、8.0㎡になっており、少し広くなりました。多床室の場合、一室当たり定員は4名以下です。(Ⅰ型)
ただし、いくら医療が充実しているとはいえ、「生活施設」としての機能も兼ね備えた介護医療院は、その機能を考慮し、プライバシー尊重のため、個室やユニット型を理想としています。たとえ、多床室の場合であったとしても、カーテンではなく、パーテーションや家具等を組み合わせて間仕切りが設置されているなど、プライバシーに配慮した療養環境を提供することが重要視されています。

介護医療院の形態

基本的に地方公共団体や医療法人、社会福祉法人などが運営を行っている介護医療院には、以下の形態があります。

介護医療院の形態
医療機関併設型介護医療院 病院又は診療所に併設されており、入所者の療養生活を
サポート。
併設型小規模介護医療院 医療機関併設型介護医療院の中でも、当該介護医療院の
入所定員が19人以下。
ユニット型介護医療院 ユニットごと(1ユニットおおむね10人のグループ)に日常生活
上が営まれており、ユニットごとにサポート。
単独型 上記に当てはまらない、単独の介護医療院。

医療機関併設型介護医療院のうち、入所定員が19人以下のものは、「併設型小規模介護医療院」に分類されます。
併設型小規模介護医療院は、病院又は診療所に1か所の設置となります。

公的介護保険の施設サービスに指定されている施設であるため、要介護と認定された方のみ、施設サービス費用の1割を自己負担することで、介護医療院を利用することが可能となっています。(所得に応じて2割~3割負担の場合もある)

介護医療院の入所条件

介護医療院は、「医療の必要な要介護高齢者の長期療養・生活施設」であり、重篤な身体疾患を有する方や身体合併症を有する認知症高齢者の方等に長期療養等を行うことができる施設です。入居には、「要介護1~5の認定を受けた65歳以上の方」、もしくは、「40~64歳の方で、特定疾病により要介護認定を受けている方」が条件となります。
自立・要支援1・要支援2の高齢者が利用することはできません。
要介護1~5の認定を受けた方の中でも、入院治療が必要となるほどの容態ではないものの、胃ろうや経鼻栄養、たんの吸引といった、日常的あるいは継続的な医学管理が必要で、在宅や他の介護施設などでは支援をすることが難しい方を主な入所対象としています。
ルール上では、要介護1以上であれば入所対象となりますが、実際には、要介護4、要介護5の方が多い傾向にあるようです。
また、施設によっては、「伝染病などの疾患がない」ことを条件としているところもあるため、施設ごとの入居条件も確認する必要があります。
※介護医療院は、住民票がないところでも入所可能

介護医療院の費用

介護医療院の入所に一時金は不要です。
主に以下の費用がかかります。

  1. サービス費(ターミナルケア・機能訓練・介護・看護などを含む)
  2. 居住費(家賃)
  3. 食費
  4. 日常生活費などその他費用

サービス費は、入所者の要介護度や利用している居室のタイプ、「Ⅰ型」・「Ⅱ型」であるか、職員の配置や人数などによって異なります。
ちなみに、介護医療院等へ移行中で2024年度に廃止予定の介護療養型医療施設は、医療の必要性の高い患者などの受け入れ状況に応じて、「療養機能強化型A」「療養機能強化型B」に分けられているのですが、この点を考慮した上で、介護医療院のサービス費も細かく分けられています。
実際の自己負担額は、かかったサービス費の1割となっていますが、一定以上の所得がある場合は、2~3割負担となります。
サービス費以外の毎月支払う経費は、介護老人福祉健施設と同様です。
おむつなどの日常生活品、水道光熱費、診断書の文書料等は介護保険外にあたるため、全額自己負担となります。
これらの費用は、毎月支払う「月額費用」の内訳になります。ただし、介護医療院は医学的ケアをメインとしており、専門的な医療処置などを行うためか、他の公的施設と比較すると、月額費用は高い傾向にあるといわれています。

Ⅰ型介護医療院サービス費
サービス費(Ⅰ)
強化型A相当
看護6:1、介護4:1
サービス費(Ⅱ)
強化型B相当
看護6:1、介護4:1
サービス費(Ⅲ)
強化型B相当
看護6:1、介護5:1
従来型個室  多床室  従来型個室  多床室  従来型個室  多床室 
要介護1 698円 808円 688円 796円 672円 780円
要介護2 807円 916円 795円 903円 779円 887円
要介護3 1,041円 1,151円 1,026円 1,134円 1,010円 1,117円
要介護4 1,141円 1,250円 1,124円 1,231円 1,107円 1,215円
要介護5 1,230円 1,340円 1,212円 1,320円 1,196円 1,304円
Ⅱ型介護医療院サービス費
サービス費(Ⅰ)
療養型老健相当
看護6:1、介護4:1
サービス費(Ⅱ)
療養型老健相当
看護6:1、介護5:1
サービス費(Ⅲ)
療養型老健相当
看護6:1、介護6:1
従来型個室  多床室  従来型個室  多床室  従来型個室  多床室 
要介護1 653円 762円 637円 746円 626円 735円
要介護2 747円 857円 731円 841円 720円 830円
要介護3 953円 1,062円 936円 1,046円 925円 1,035円
要介護4 1,040円 1,150円 1,024円 1,134円 1,013円 1,123円
要介護5 1,118円 1,228円 1,102円 1,212円 1,091円 1,201円

※ユニット型介護医療院の基本サービス費は別途定められています。
※1割負担表記
≪参考≫令和元年度厚生労働省「介護医療院開設移行状況把握及び研修等一式事業」
介護医療院開設に向けたハンドブックより

介護医療院のメリット・デメリット

メリット

  • 医療と介護両方のケアをバランス良く受けられる。
  • 高度な医療ケアに対応しているため、慢性の疾患を抱えている方でも医学的管理の下で長期間の入所が可能。
  • 医療スタッフの体制が整っているため、急に体調が悪くなったなど緊急時の対応も安心。
  • 健康管理や機能訓練などサポートが充実している。
  • ターミナルケアや看取りも対応している。

デメリット

  • 専門的な医療体制が整っており、設備や運営にもお金がかかっているせいか、福祉施設に比べて月額費用が割高な傾向にある。
  • 多床室が多く個室が少ないため、プライバシー保護が難しい。
  • レクリエーションなどが、介護老人福祉施設と比べて少ない。

介護医療院は、長期にわたり療養が必要な要介護者を対象としている施設ということもあり、介護サービスはもちろん、医療体制が充実しているため、安心して日常生活を送ることができるというメリットがあります。点滴、たん吸引、注射など、医師や看護師との連携の必要性が高い医療的処置も受けられ、長期での入所が可能です。
ただし、2018年に創設されたばかりで、現在は移行期間となっているため、介護医療院の施設数は今後増えていくのか、介護療養型医療施設(療養病床)から介護医療院への転換はスムーズにできるのか、このまま計画通りに進むのかなど、不透明な部分もあります。

経済状況によって変わる選択肢

自分の親が入居する施設を選ぶ際には、まず、親の蓄えと収入を把握・整理することから始めていきましょう。
まずは、親の「総資産額」と「月々の収入額」を知る必要があります。もし、親にローンや負債などがある場合は、「総資産額」から差し引いておきましょう。

【総資産額】
預貯金、生命保険、自宅などの不動産の合計金額
【月々の収入額】
公的年金、個人年金、給与収入、家族の援助、その他収入の合計金額

実際、親の施設入居時に必要となる入居一時金など、まとまったお金が必要な時は「総資金額」から、毎月支払う月額費用は、「月々の収入額」から支払うと考えて、施設を選んでいきます。入居する際に費用はいくらかかるのかを調べていくのではなく、「費用をいくらかけられるか」を考えておくのが施設を選ぶ時のポイントです。

施設に入居する際にかかる費用の内訳としては、まず、入居時に支払う「入居一時金(0円~数億)」、「月々にかかる費用(居住費・食費・介護サービス費・生活サービス費等)」、「その他の費用(日用品・医療費・小遣い等)」、「予備費」があります。
ただし、これらの料金は施設によってかなり差があります。例えば入居一時金の場合では、支払わなくても良い施設もあれば、数億円かかる施設もあります。月額費用に含まれている介護サービス費なども、入居者の要介護度や利用している居室のタイプなどによって金額が変わってきます。

収入が国民年金のみであり、貯蓄が無い状態であるならば、所得によって軽減制度のある施設を入居候補に選ぶ必要があります。例えば、特別養護老人ホームや老人保健施設、今回ご紹介しました介護医療院などが挙げられます。介護度が高い場合は「介護保険施設」を選択するか、在宅で小規模機能を利用するという手もあります。

経済的にゆとりがあると施設の選択肢は増えますが、検討する要項が多くなり、施設を絞るのに時間がかかるケースも考えられます。
親の蓄えと収入を把握・整理だけではなく、施設を探す前には自分の中であらかじめ条件を整理しておくと良いかもしれません。

まとめ

介護医療院は、長期間の療養が必要な要介護者を対象とし、介護や医療だけではなく、住まいや看取りまでを視野に入れた新しいモデルの施設といえます。
ただし、2018年に創設されてからまだ時間が経っていないため、今後制度等が変わる可能性もあります。「介護医療院」に興味のある方は、一度、市区町村や施設に直接問い合わせをすることをお勧めします。

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