将来は、自由でアクティブなシニアライフを送りたいと思っている方に選択肢の一つとして考えていただきたい「シニア向け分譲マンション」。現在の住居はバリアフリーになっておらず、近いうちに住み替えを考えているという方にもおすすめです。
「シニア向け分譲マンション」は、他の施設や高齢者向けの住居とは異なり、マンション内の住戸を購入することになるため、所有権を得ることで、部屋の売却や賃貸などは購入者の自由にすることができます。価格は高めではあるものの、マンション内は高齢期に備えたサービスや設備が充実しており、サービスを受けながら自由な暮らしができるようになっています。
今回は、自分の資産となり、自由な暮らしができるシニア向け分譲マンションについてご紹介したいと思います。

目次

シニア向け分譲マンションの特徴

シニア向け分譲マンションとは

「シニア向け分譲マンション」とは、高齢者が利用しやすいよう、さまざまな生活支援サービスや設備、環境が整った、高齢者向けに作られた分譲マンションのことです。主に、民間事業者が販売・運営を行っています。
段差の解消や手すりの設置、車いすでも生活しやすい廊下幅、スライドさせて開閉する引戸など、部屋の内装は一般的にバリアフリー設計となっており、食事の提供や安否確認、緊急時対応、レクリエーションといったサービスが充実しています。
多くの「シニア向け分譲マンション」では、コンシェルジュが常駐しており、クリーニングサービスや宅配の受け取り、タクシーの手配、荷物預かり、来客の対応等のフロントサービスを利用することが可能です。
主な共用設備は、各物件によって異なりますが、高額なところでは、レストランや大浴場、シアタールーム、図書室、スポーツジム、フィットネス、ゲストルームなどが備えられているマンションもあります。
ただし、「シニア向け分譲マンション」はあくまで高齢者向けのマンション(住居)であり、介護施設や医療機関という立ち位置ではないため、マンション内のスタッフによる身体介護や医療措置には対応していないところがほとんどです。入居者は、主に、自立した生活が可能な高齢者を対象としています。基本的には、入居後に介護が必要となった場合は、外部の介護サービスを利用することになります。

「シニア向け分譲マンション」の〝分譲マンション〟とは、1棟のマンションを1住戸ごとに販売している物件のことをいいます。購入した住戸は、購入者の資産となる(所有権が得られる)ため、賃貸や売却、相続、譲渡、専有部分のリノベーションが可能となっています。このような権利形態は、他の高齢者施設や高齢者向け住宅とは大きく異なる特徴です。
ちなみに、分譲マンションをリノベーションしてから売却する場合は、規約にのっとって行う必要があります。一般的な分譲マンションと同様に、「シニア向け分譲マンション」も管理規約が定められているため、リノベーションを行う際は十分に気を付けましょう。
都心部へアクセスしやすいなど立地条件が良ければ、資産価値は下がりにくいため、中古の分譲マンションでも売れやすい傾向にあります。

「シニア向け分譲マンションは立地によって、都市型・リゾート型などに分類することができます。

【都市型】中心部
都市部の主要となる駅から近い立地。住宅地ではないが公共施設や(行政・医療他)商業施設が周囲にある。

【都市型】住宅地
都市部の住宅地に立地。最寄りとなる駅近くには、公園やスーパー、個人病院があり、生活しやすい。

【都市近郊型】
都市部からは少し離れた住宅地。都市型(中心部)と同様に公共施設や(行政・医療他)商業施設があり、生活しやすい。

【リゾート型】
別荘地や温泉地、海などの自然にあふれた立地。名称の通り、リゾート生活に近い生活ができる。

シニア向け分譲マンションとサービス付き高齢者向け住宅の違い

シニア向け分譲マンションとサービス付き高齢者向け住宅の違い
シニア向け分譲マンション サービス付き高齢者向け住宅
契約方式 所有権方式 賃貸借契約
床面積 基準なし
(マンションによって部屋の広さが異なる)
1戸あたりの床面積:原則25㎡以上
(場合によっては18㎡以上)
サービス サービス内容はマンションによって異なる
(食事の提供、見守り、掃除・洗濯、
(フロントサービス))
「安否確認」と「生活相談サービス」の
提供が義務づけられている。
設備 基準なし
(マンションによって設備が異なる)
・台所、水洗便所、収納設備、洗面設備、
浴室が各戸に設置されている
・バリアフリー構造である

〝高齢者向け住宅〟には、「シニア向け分譲マンション」の他に、「サービス付き高齢者向け住宅」があります。「サービス付き高齢者向け住宅」は、安否確認と生活相談のサービスが付いた、バリアフリー構造を有する高齢者向け賃貸住宅のことです。
シニア向け分譲マンションと少し似ているようにも感じますが、「サービス付き高齢者向け住宅」は、法律に基づいた基準や条件があるのに対し、「シニア向け分譲マンション」は、明確な基準が定まっていません。

シニア向け分譲マンションは、基本的に富裕層やアクティブな高齢者をターゲットにしているため、食事の提供や洗濯といった日常生活上のサポートの他、季節ごとの行事・ミニコンサートなど、さまざまなイベントが開催されています。物件によっては、カラオケルームやシアタールームなど、娯楽設備が整っているところもあり、共用スペースは、一般的な分譲マンションよりゆったりとした造りになっているのが特徴です。
上記の表にある通り、「シニア向け分譲マンション」は、設備基準がありません。しかし、高齢者を対象としているマンションであるため、基本的には、居室や共有スペースはバリアフリー設計となっており、中には、見守りサービスや緊急時対応サービスを行っている物件もあります。

「シニア向け分譲マンション」は、入居者が介護サービスや医療サービスを利用するには、外部の事業者と契約しなくてはなりませんが、物件によっては、棟内に24時間体制でスタッフが常駐しているところや、日中だけ看護師を配置しているところもあります。
また、訪問介護事業所を併設しているマンションや病院と連携しているマンションは、速やかな緊急対応が可能であったり、定期的な健康診断を実施していたりするなど、介護・医療サービスに力を入れています。

高齢者が生活しやすいように配慮されているのは、マンションの内装だけではありません。例えば、マンションの周辺に、スーパーやドラッグストア、銀行、駅などが歩いて行ける距離にあるなど、立地の良さにまでこだわっているところも多くあります。さらに、天気が悪い日や足が不自由な高齢者のために、マンション専用のシャトルバスが出ているなど、不便を感じさせない暮らしができるよう、いろんな面で配慮がなされています。
食事は、入居者が自分で用意することができますが、マンション内にはレストランを備えているところもあり、利用可能です。施設によっては、部屋にまで料理を持ってきてくれるサービスもあります。もちろん、入居者が自分で食事を用意することも可能です。

シニア向け分譲マンションの入居条件

法律による基準がないため、入居条件は物件によって異なります。ただし、シニア向けということもあり、対象となる年齢は、50~60歳以上が多く、夫婦や親子での入居も可能です。(年齢制限がないところもある)
入居するにあたり、要介護度に関しても特に決まりがあるわけではありませんが、先ほども説明したように、「シニア向け分譲マンション」は、介護施設や医療機関ではないため、自立した高齢者を対象としている物件が多い傾向にあります。
要介護度が低い場合には、入居前に相談することで入居が可能になることもあります。万が一、入居中に重度の要介護状態になった場合は、シニア向け分譲マンションには日常的な介護や医療措置に対応できる体制が整っていないため、住み続けることが困難となり、退去となる可能性があります。
この他にも、「身元引受人がいる」などの、事業所独自の入居条件もあるため、前もって確認しておきましょう。

シニア向け分譲マンションの費用

シニア向け分譲マンションの購入は、通常のマンションを購入するのと同様、購入時に支払う購入費用(初期費用)と、毎月支払う管理費や修繕積立金などが含まれた、月額費用が必要です。シニア向け分譲マンションは、 通常の分譲マンションと比べ、利用できるサービスの種類が多くなるほど、また、立地条件が良いところほど、 費用は高くなる傾向にあります。施設によってさまざまですが、主に、経済的に余裕のある高齢者が対象となっているため、初期費用は、数千万円~、高いと数億円かかると言われています。
購入後、毎月支払っていく月額費用には、管理費、修繕積立金、固定資産税などが含まれ、それ以外に利用した分のサービス費(食事提供、掃除、洗濯等)などがプラスされていきます。物件によって金額は異なりますが、管理費や修繕積立金、固定資産税等も支払うため、月額費用は、数十万円が目安と考えておきましょう。

※注意点

シニア向け分譲マンションは、通常の家を買うのと同様、購入時に住宅ローンを組むことも可能となっています。
返済完了時の年齢が決められているなど、住宅ローンを組む際の条件は、金融機関によって異なってくるため、あらかじめ確認しておくようにしましょう。

シニア向け分譲マンションのメリット・デメリット

メリット

  • バリアフリー設計であったり、駅までアクセスしやすかったりと、高齢者が利用しやすい内装や環境が整っている。
  • 「所有権方式」であるため、購入すると資産になり、住戸の売却・相続・賃貸・譲渡・リフォーム等が可能。
  • サービス、共用施設、イベント等が充実しており、アクティブな老後を過ごせる。
  • 生活に制限がないため、自分らしく、自由に暮らすことができる。
  • 介護サービス事業者や病院と提携しているところもあり、健康管理や素早い緊急時対応が可能。

デメリット

  • 要介護状態が重度になると、住み続けるのが困難となる。
  • 費用が高額。
  • 物件数が少ないため、選択肢が限られる。
  • 年齢制限を設けている物件が多い。
  • 将来、購入した住戸を譲渡、売却、賃貸活用する際に、資産価値が不明。

例えば、有料老人ホームの場合は、「終身利用権方式」であり、居室や共有スペース、介護サービス等を終身にわたって利用することができる権利を得ることができますが、契約した人以外は施設に入居することができませんし、施設に住んでいる
期間が長くなるほど、トータルで高額な費用が掛かります。さらに、本人が亡くなった後に部屋を譲渡することもできません。
また、高齢者向け住宅である「サービス付き有料老人ホーム」は、通常の賃貸物件を借りるのと同様に、「賃貸契約」となります。居住している部屋が自分の所有物になるわけではないため、住戸の売却・相続・賃貸・譲渡・リフォーム等も不可能です。

それに比べて、シニア向け分譲マンションは、「所有権方式」であることから、購入した住戸は購入者の資産となります。要介護度が高くなってやむを得ず退去となった場合も、その部屋を売却したり、自分の子供に相続させたりすることができます。購入した住戸を自分が大家となり、賃貸物件として他人に貸すことも可能であるなど、本人が居住しなくても様々な利用価値があります。
また、有料老人ホームのように、1日のスケジュールが決められていたり、生活に制限があったりするわけではないため、見守りサービスや緊急時対応サービスなどを受けながら、安心して自由な生活を送ることができるのもポイントです。

ただし、サービスや設備などが整っている分、費用がかなり高額で、物件数も少なく、選択肢は限られます。市場もまだ成熟していないため、いつか購入した住戸を売却や賃貸にすることを考えた時に、将来的な資産価値が不明という不安な要素もあります。
また、入居者の要介護度が高くなると、訪問介護等の利用だけでは住み続けることが難しくなるため、他の施設へ移らなくてはいけない場合があります。
そこで注意していただきたいのが、管理費等の支払いです。シニア向け分譲マンションを売却できずにそのまま所有している状態では、自分の資産であるが故に、管理費や修繕積立金、固定資産税等を支払い続けなければいけません。必ず、ご家族など身近な方に、自分にもしものことがあった場合の対応などについて、相談しておきましょう。

シニア向け分譲マンション以外の高齢者向けの住居

ここでは、シニア向け分譲マンション以外の高齢者向け住居についてご紹介したいと思います。

■グループリビング
一人暮らしの高齢者、あるいは高齢者の夫婦が、気の合う仲間とお互い助け合いながら過ごし、共同生活を送る共同生活形態です。認知症高齢者が共同生活を送る「グループホーム」とは異なり、比較的自立した生活が可能な高齢者が集まって暮らしていく、シェアハウスのようなものとなっています。特に夫婦で二人きりの暮らしをしている高齢者にとっては、何かあった時でも安心です。食堂、浴室等は共用スペースですが、個人の部屋もちゃんと用意されており、施設によっては、トイレや洗面所が各部屋に設置されているところもあります。
グループリビングは、共同生活を行う集団により形態はそれぞれ異なります。胃ろうや人工透析患者に対応しているところや、ペットを飼っても良いところなど、自分の生活状況や経済状況に合った住居を探すことができます。

■ホームホスピス
人生の最期を、施設や病院でもなく、家庭的な雰囲気で過ごせるように配慮されており、NPO法人などが空き部屋を用いて運営している、民間のケア付き共同住宅です。がんの末期だけではなく、あらゆる病気や障害で困難に直面している
人を対象とし、きめ細かな医療的ケアと介護を受けながら、病院には搬送せず、最期まで個人の尊厳をもって暮らすことを目的としています。

まとめ

今回は、シニア向け分譲マンションをご紹介しました。
シニア向け分譲マンションは、高齢者が住みやすいように配慮された住居であり、日常生活の支援や娯楽設備が充実している他、緊急時対応や見守りサービスなど、高齢者の方を見守る安心のサービスが付いています。
他の高齢者向け住宅や老人ホームとは違って、住戸を購入することで所有権を得られる仕組みとなっているため、ご家族に資産として残すことができます。
物件数が少なく、費用が高額であることから、手を出しづらいと思っている方もいると思いますが、その分、サービスや設備などが充実しており、自分のペースで自由に暮らしながら、安心したシニアライフを送ることができます。ぜひ、今後の住まいを考える際の参考にしてみてはいかがでしょうか。

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