食事づくりや清掃、洗濯など、できることは自分で行い、日常生活の認知症による症状の改善や予防に取り組んでいる、「グループホーム(認知症対応型共同生活介護)」。
認知症の方が受け入れ可能な施設はさまざまありますが、「グループホーム(認知症対応型共同生活介護)」の場合は、共同生活を送りながらも各自に個室がある為、認知症の方に配慮された環境の中で、専門的なケアを受けながらもプライベートを確保することができます。場合によっては1日のスケジュールが決まっていないところもあるため、自由に外出・外泊できるところも大きな特徴です。
そこで今回は、生活の自由度が比較的高いグループホーム(認知症対応型共同生活介護)の特徴や入居条件などについて詳しくご紹介したいと思います。

目次

グループホーム(認知症対応型共同生活介護)の特徴

グループホーム(認知症対応型共同生活介護)の概要

グループホーム(認知症対応型共同生活介護)の概要
〝グループホーム〟や〝認知症高齢者グループホーム〟とも呼ばれ、介護保険で利用できる認知症対応型共同生活介護とは、認知症の要介護者の共同生活住居において、24時間体制で、入居者の介護や日常生活上の支援、機能訓練やレクリエーション等を専門の介護スタッフが、実施する介護サービスのことです。
(5人以上9人以下のグループを一単位(1ユニット))
グループホーム(認知症対応型共同生活介護)は、基本的に、食事の準備や掃除、洗濯などの家事全般や、身の回りの管理などは、無理のない範囲で入居者自身が行うことになっており、入居者それぞれの認知症の程度に応
じて役割を分担し、入居者同士で協力して家事などに取り組むこともあります。

介護付き有料老人ホームの特徴
入居者の定員 1ユニット:5人~9人
基本的に、一事業所に2ユニットまで(18人)
居室 個室(床面積7.43㎡(和室4.5畳)以上)
共用設備 居間、食堂、台所、浴室、洗面設備、消防設備、
その他非常災害に際して必要な設備(1ユニットごとに設置。
異なるユニットとの共用は認められていない。)
立地 住居地、あるいは住居地と同程度で、入居者の家族や地域
の住民と交流を持つ機会が確保できる地域
管理者 3年以上認知症の介護従事経験がある者で、厚生労働大臣
が定める研修を終了した者が常勤専従
人員配置 利用者:介護従事者=3:1(日中)
夜勤は職員を1人以上配置
計画作成担当者(介護支援専門員)は、ユニットごとに最低
1人配置

認知症の方は、駅や電車、イベント会場などの人ごみや人の動き、強い音・光などが苦手なため、人がよく入れ替わりする環境や、大人数の中での生活、騒音が多い場所などは、あまり好ましくないとされています。環境の変化に強いストレスを感じますが、見慣れた人や場所など、なじみのある環境には安心感を覚えます。
グループホームでは、1ユニットが5人~9人以下と少ない人数で構成されており、毎日ほぼ変わらない顔ぶれのため、他の入居者の方や施設の職員の方と顔なじみの関係を築くことがでるようになります。さらに、大規模施設とは違う、家庭的な雰囲気で落ち着いた環境の中での生活は、心身ともに穏やかな状態を保ちやすくり、認知症の進行を遅らせることにも繋がります。その為、一時的に心理症状や行動に問題が起きたとしても、グループホームの環境の中にいれば、落ち着いた状態が比較的取り戻しやすくなります。
〝共同生活〟といっても、入居者一人一人には個室が与えられているため、日中などは共同スペースで他の入居者との交流を楽しみつつ、プライベートな空間もしっかり確保できます。施設によっては、1日のタイムスケジュールや外出の制限などを特に決めていないところもあるため、ある程度自由な生活を送りたいという方は、そのような施設を探してみるのも良いでしょう。

地域密着型サービスに分類されている

グループホーム(認知症対応型共同生活介護)は、介護保険の「地域密着型サービス」に分類されています。
「地域密着型サービス」とは、今後増えると予測される認知症高齢者や中等度の要介護者が、できる限り住み慣れた地域での生活が継続できるよう、厚生労働省が定める基準の範囲内で、各市町村指定の事業者が地域住民に提供するサービスのことです。グループホーム(認知症対応型共同生活介護)も含め、いくつかのサービスがあります。

【地域密着型サービス一覧】

・認知症対応型共同生活介護
・認知症対応型通所介護
・地域密着型通所介護
・地域密着型特定施設入居者生活介護
・地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
・小規模多機能型居宅介護
・定期巡回・随時対応型訪問介護看護
・夜間対応型訪問介護
・看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)
・共生型地域密着型通所介護

「地域密着型サービス」は、原則、自分の住民票がある地域に設置された事業所でないと、介護サービスを利用することができないため、グループホーム(認知症対応型共同生活介護)を選ぶ際はその点に注意する必要があります。しかし、住民票がある住み慣れた地域で生活できる環境は、認知症の方やその家族にとって、安心できる要素の一つになります。また、共同生活を通して地域住民と関わる機会が増えるきっかけにもなるため、日常生活の活性化に繋がるでしょう。
このように、グループホーム(認知症対応型共同生活介護)は、認知症の高齢者が生活しやすい環境が整えられており、可能な限り自立した生活を維持することや、認知症の症状の改善・進行を遅らせることを目的として、 さまざまな支援や専門的ケアに取り組んでいます。

人員配置に関しては、配置しなければならない職員の人数は定められているものの、医師や看護師といった医療職員の配置は義務付けられていません。そのため、入居中に入居者の医療ニーズが増加した場合、住み続けるのが困難となり、退去せざるを得ない場合があります。実際、厚生労働省の「H29年認知症対応型共同生活介護、認知症対応型通所介護等の報酬・基準について」の資料では、「認知症グループホームからの退居要因」で最も多かった退去理由は「医療ニーズの増加」という結果になっており、厚生労働省では、看護職員の配置など医療体制を強化する意見も出てきています。地域の「認知症ケアの拠点」として期待されているグループホームですが、医療的ケアが必要となった場合の対応は施設ごとで変わってきますので、将来が心配な方は、看護師の配置があるかないかなども確認しておくと良いでしょう。

グループホーム(認知症対応型共同生活介護)の入居条件

グループホーム(認知症対応型共同生活介護)は認知症の高齢者を対象としていますが、具体的には以下のような条件が必要となります。

・要介護1~5の認定を受けている方
・医師から認知症の診断を受けている方
・ある程度自立した生活を送ることができる方
・集団生活が可能である方
・原則、利用するグループホームがある地域に住民票がある方

グループホームは認知症の方のみが対象です。認知症であるという医師の診断書が必要になることや、ある程度自立した生活を送れること、共同生活が可能であること(「周囲の人に危害を加えてしまう」などは入居対象外)などが入居条件に含まれますが、認知症の原因となる疾患(脳血管障害など)が急性期(症状が急に起こる、または進行が早い場合)である場合などは、入居対象にはなりません。
施設によって対応は異なるため、要介護1~5の認定を受けた方を対象としていながら、重度の要介護者は入居を断られる可能性もあります。
これら以外にも、施設ごとで設定されている入居条件もあり、感染症にかかっている方や認知症以外の病気の治療が終わっていない方を入居対象外とするところもあるため、施設選びの際には必ず確認するようにしてください。

※生活保護法による指定を受けているグループホームは、生活保護を受けている方でも、入居の相談・対応が可能です。入居に関して不安に思っていることがあれば、高齢者総合相談センターや民間の照会センター、担当のケアマネジャーなどに相談してみましょう。

グループホーム(認知症対応型共同生活介護)の費用

グループホーム(認知症対応型共同生活介護)では、入居時に支払う「初期費用」と、入居後毎月支払う「月額費用」が必要になります。

まず、入居時に初期費用として「入居一時金」や「保証金」を支払うことになりますが、初期費用の金額は施設によって大きな差があり、0円のところもあれば100万円以上かかるところもあります。
入居後毎月支払う「月額費用」には、家賃や管理費、光熱費、食費、おむつ代などの日常生活費などが含まれており、目安としては、15万円~20万円程度の費用がかかります。
初期費用が安い施設ほど、その分が月割りで月額費用に上乗せされるため、初期費用が抑えられているところは、高い月額費用を支払うことになると考えて良いでしょう。

また、介護保険サービス料(認知症対応型共同生活介護)は、基本的に要介護度が高くなるほど、利用料も高くなるように設定されています。細かい費用については、サービスの内容やサービスを利用した時間帯、サービスを提供する事業者、各市町村などによってそれぞれ異なるため、気になる方は担当のケアマネジャーに相談してみると良いでしょう。

1日あたりのサービス費(利用者1割負担の場合)

認知症対応型共同生活介護費(Ⅰ)
ユニット(共同生活住居)が1つの場合
要介護1 761円
要介護2 797円
要介護3 820円
要介護4 837円
要介護5 854円
認知症対応型共同生活介護費 (Ⅱ)
ユニット ( 共同生活住居 ) が 2つ以上の場合
要介護1 749円
要介護2 784円
要介護3 808円
要介護4 824円
要介護5 840円

※利用者1割負担の場合。
※この他に食費やおむつ代など日常生活費は必要。

グループホーム(認知症対応型共同生活介護)のメリット・デメリット

メリット

  • 家庭的な雰囲気の中で生活できる。
  • 認知症ケア専門のスタッフが常駐している。
  • 認知症の改善や進行の予防に繋がる。
  • 生活機能の低下を防ぐ。
  • 住み慣れた地域で生活できる。
  • 少人数制で、他の入居者や職員とコミュニケーションがとりやすい。
  • 本人の能力に応じたケアを行ってくれる。
  • プライベートの空間が確保できる。
  • レクリエーションが充実している。(※施設による)
  • 初期費用が比較的安い。

デメリット

  • 医師や看護師などの医療職員の配置が義務付けられていない。
  • 認知症の進行具合によっては退去になる可能性がある。
  • 住民票がある地域のグループホームしか利用できない。
  • 地域によって空きが少ない施設がある。

グループホームは少人数制であることから、他の入居者や職員とコミュニケーションをとりやすく、環境の変化に敏感な認知症の方に配慮された生活環境になっていることや、施設で働く職員にとっても、入居者一人一人に目が届いて、ちょっとした変化にも気づきやすいというメリットがあります。また、「地域密着型サービス」により、設備や運営等の基準が定められているため、認知症ケア専門のスタッフによる見守り体制が整っているのも、安心できるポイントの一つです。
日常生活においては、スタッフによるサポートを受けながらも、基本的には家事や身の回りの世話は入居者自身で行うことになっているため、入居者の生活機能の低下を防ぐことにも繋がります。また、入居者同士で家事を分担するなど、自分の役割を見出すことにより、生きがいや自尊心を得ることができたり、認知症によって失いかけた能力を引き出したりするきっかけにもなります。レクリエーションも充実し、行事を通して、地域の人々と触れ合う機会もたくさん提供されているため、初期費用も有料老人ホームと比較すると費用は安めです。

ただ、先ほどもご説明したとおり、グループホームは医師や看護師などの医療職員の配置が義務付けられていません。そのため、専門的な医療ケアを実施していない施設もあり、認知症が進行して症状が重くなった場や、常に医療的ケアが必要となった場合は、退去となるケースも考えられます。
また、利用できるグループホームは、住み慣れた地域から離れずに生活できるという良さがある反面、利用できるグループホームは住民票がある地域に限られているため、地域によっては空きが少なく、入居するまでに時間がかかる施設もあります。

介護予防認知症対応型共同生活介護とは

「介護予防認知症対応型共同生活介護」とは、認知症と診断された方で、「要支援2」の認定を受けた方を対象としたサービスになります。
※「要支援1」は利用不可。
「介護予防認知症対応型共同生活介護」と「認知症対応型共同生活介護」では、サービスの対象となる要介護度が異なるだけで、それ以外の設備や人員配置等の基準、サービスの内容は共通です。

「要支援2」の方に提供される「介護予防認知症対応型共同生活介護」と、「要介護1以上」の方に提供される「認知症対応型共同生活介護」を、同一事業所で一体的に運営している場合、「認知症対応型共同生活介護」の基準をクリアしていれば、「介護予防認知症対応型共同生活介護」の基準もクリアしているとみなされます。グループホームが要支援2以上の方から受け入れが可能ということは、「介護予防認知症対応型共同生活介護」と「認知症対応型共同生活介護」を一体的に運営しているということであると覚えておきましょう。

※利用者1割負担の場合。
※この他に食費やおむつ代など日常生活費は必要。

まとめ

今回は、「グループホーム(認知症対応型共同生活介護)」をご紹介させていただきましたが、いかがでしたか。
グル-プホームは認知症ケアに特化した施設であり、入居者の家族や地域住民との交流が図れる住み慣れた地域での暮らしとなるため、入居する本人だけでなく、家族も安心感がありますし、家での介護の負担を軽減することになります。施設によっては医療ケアに対応していないなど、デメリットもありますが、自宅での介護とは異なり、共同生活やレクリエーションなどを通して、認知症の進行予防や改善を図ることができるなど、グループホームならではの特色もあります。
認知症の方、及びご家族の方が共に良い関係を築いていくためにも、在宅介護だけにとらわれず、施設の選択肢の一つにグループホームを入れてみてはいかがでしょうか。

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