介護保険施設等へ入所した際や、ショートステイを利用した際にかかった食費や滞在費等は、原則、全額自己負担となっています。
ただし、介護保険制度は、所得の低い利用者に、所得に応じた「負担限度額」を設定し、それを超えた分に関しては給付するという、特定入所者介護サービス費というものがあります。
今回は、「介護保険負担限度額認定(特定入所者介護サービス費)」の対象となる要件や、申請方法等についてご説明します。

目次

介護保険負担限度額認定(特定入所者介護サービス費)とは

介護保険施設等へ入所、あるいは短期入所(ショートステイ)を利用した際に、かかった食費や居住費、滞在費は、基本的に、利用者の全額負担となります。
そこで、生活保護を受給している方や、市町村民税非課税者など、所得が低く負担が困難という方のために、利用者の負担を軽減するための「介護保険負担限度額認定制度」が設けられています。
この制度は、それぞれの所得に応じて、費用の「負担限度額(自己負担の上限額)」を設定し、それを超えてしまった場合、「特定入所者介護サービス費」として介護保険から給付されるものです。
実際の給付は、現物給付になるため、利用者は、負担限度額までの住居費や食費を施設に払うことになります。

■負担軽減の対象となる介護サービス

【入所】
・指定介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
・指定介護療養施設(療養型医療施設)
・介護医療院
・介護老人保健施設(老人保健施設)
・地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護

【短期入所(ショートステイ)】
・短期入所生活介護
・短期入所療養介護
・介護予防短期入所生活介護
・介護予防短期入所療養介護

介護保険負担限度額認定(特定入所者介護サービス費)の対象者

「介護保険負担限度額認定」を利用するためには、利用者は、必要な要件を全て満たす必要があります。
「介護保険負担限度額認定(特定入所者介護サービス費)」の主な対象者は、以下の通りです。

▪市町村民税非課税世帯である(世帯を別にしている配偶者を含む)
▪預貯金額等の合計が、単身(配偶者がいない)の場合で1,000万円以下、配偶者がいる場合で2,000万円以下である

この「預貯金等」とは、具体的には以下を指します。
▪預貯金(普通・定期)
▪有価証券(株式・国債・地方債・社債等)
▪金・銀(積立購入を含む)等、購入先の口座残高によって時価評価額が容易に把握できる貴金属
▪投資信託
▪タンス預金(現金)

対象者は、所得や預貯金等に応じて、4つの段階に振り分けられます

利用者負担段階 主な対象者  
第1段階 ・生活保護受給者
・世帯(世帯を分離している配偶者を含む。以下同じ。)
全員が市町村民税非課税である老齢福祉年金受給
かつ、預貯金等
が単身で1,000万
円(夫婦で2,000
万円)以下
第2段階 ・世帯全員が市町村民税非課税であって、
年金収入金額(※)+合計所得金額が80万円以下
第3段階 ・世帯全員が市町村民税非課税であって、
第2段階該当者以外
第4段階 ・世帯に課税者がいる者
・市町村民税本人課税者

※平成28年8月以降は、非課税年金も含む。
参考:厚生労働省 2019年度介護報酬改定について

基本的に、負担軽減の対象となる低所得者は、第1段階~第3段階の方になります。
ただし、負担限度額が適用されない第4段階の方も、特定の要件を満たす場合には、「特例減額措置」として、第3段階の負担限度額の適用を受けることができます。
具体的には、高齢夫婦等の世帯で、どちらかが施設に入所し、食費・居住費を負担した結果、残された他の世
帯員(配偶者)が生計困難となる場合に、利用者負担段階が第4段階から第3段階へ変更となり、「特定入所
者介護サービス費」が適用されます。
利用者負担段階第4段階の方で、特例減額措置の対象となるのは、下記の6つの項目を全て満たす方です。

  1. 2人以上の世帯(施設入所により世帯分離している配偶者含む・年齢要件なし)
  2. 世帯員が、介護保険施設(介護老人福祉施設・介護老人保健施設・介護療養型医療施設・介護医療院)に入所し、利用者負担第4段階の居住費・食費を負担している
  3. 世帯の年間収入から、施設の利用者負担(1~3割負担、居住費、食費の年間の合計)の見込み額を除いた額が1年あたり80万円以下になる
  4. 世帯の預貯金等の額が450万円以下である(有価証券、債券等も含む)
  5. 居住の用に供する家屋その他日常生活に供する資産以外に活用できる資産を有していない
  6. 介護保険料を滞納していない

介護保険負担限度額認定(特定入所者介護サービス費)の負担限度額

特定入所者介護サービス費の日額の目安は、以下の通りになります。

  基準費用額
(日額)
負担限度額(日額)
第1段階 第2段階 第3段階
食費 1,392円 300円 390円 650円
住居費 多床室 特養等 855円 0円 370円 370円
老健・療養、医療院等 377円 0円 370円 370円
従来型個室 特養等 1,171円 320円 420円 820円
老健・療養、医療院等 1,668円 490円 490円 1,310円
ユニット型個室的多床室 1,668円 490円 490円 1,310円
ユニット型個室 2,006円 820円 820円 1,310円

≪参考≫厚生労働省 2019年度介護報酬改定について

給付を受けるには「介護保険負担限度額認定証」の交付申請を行う

自作した書類です。イメージです。

特定入所者介護サービス費の制度を利用するには、対象者(または代理人)が、自ら市町村に申請の手続きを行う必要があります。
申請により、第1段階~第3段階に該当する方には「介護保険負担限度額認定証」が交付され、利用する施設等でこれを提示することにより、初めて「特定入所者介護サービス費」が適用されます。

■申請に必要な書類
▪介護保険負担限度額認定申請書(要押印)
▪同意書(要押印)
▪本人及び配偶者の印鑑
▪預貯金等の資産額が確認できる写し(口座残高の写し等)

※成年後見人等による申請の場合は、別途、成年後見登記に関する登記事項証明書や、成年後見人の方の本人確認ができるもの(運転免許証等)が必要となります。

■申請場所各市町村の担当窓口にで、必要な書類を提出

介護保険負担限度額認定申請書や同意書は、各市町村のホームページからダウンロードが可能です。
介護保険負担限度額認定申請書では、主に、被保険者や配偶者の氏名、生年月日、住所、被保険者番号、個人番号、施設入所日といった基本情報や、預貯金額、有価証券(評価概算額)の金額等を記入します。
申請書の様式や必要な添付書類等は、市町村によって多少異なりますので、各市町村のホームページでよく確認してください。疑問等があれば、担当の窓口に問い合わせしてみましょう。
また、負担限度額認定の有効期間は、原則、申請日の属する月の初日から毎年7月31日までとなっています。
引き続き「特定入所者介護サービス費」を受けるためには、毎年、更新の手続きが必要です。

まとめ

今回は、「介護保険負担限度額認定(特定入所者介護サービス費)」についてお話させていただきましたが、いかがでしたか。
「介護保険負担限度額認定(特定入所者介護サービス費)」は、所得の低い方でも、施設でのサービスや短期入所(ショートステイ)の利用が困難とならないようにするための制度です。
ただし、「特定入所者介護サービス費」は、対象者が自動的に振り分けられ支給されているわけではなく、自ら申請する必要があります。
詳しくは、各市町村のホームページ等を確認するようにしましょう。

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